株式会社インテリジェント ウェイブ 日イスラエル中堅・中小企業協業事例 【2020/11/8】

日イスラエル中堅・中小企業協業事例
(2020.11.8)


株式会社インテリジェント ウェイブ株式会社インテリジェント ウェイブロゴ


● 会社沿革

 株式会社インテリジェントウェイブ(以下、インテリジェントウェイブ)は、1984年12月に安達一彦氏により東京都港区で設立された。1989年、クレジットカードのオンライン決済がまだ広く普及していなかった中、大量のクレジットカード決済データを正確かつリアルタイムに処理するネットワークゲートウェイシステムを確立した。その後、決済業務に必要なクレジットカードの認証機能や不正検知機能をもつシステムの構築へと業務を拡大した。
 現在、同社は「金融システムソリューション事業」と「プロダクトソリューション事業」のふたつを柱に事業を行う。金融システムソリューション事業では、クレジットカード等オンライン取引にかかる決済関連業務システムを中心としたシステム開発を行っている。代表的な製品としては、カードネットワークの接続・認証システム「NET+1」、クレジットカードシステム不正利用検知システム「ACEPlus」などがあり、クレジットカードの決済処理システムの分野では、国内トップのシェアを誇る。
 もうひとつのプロダクトソリューション事業では、企業組織の内部漏えいを防ぐ自社パッケージソフトウェア「CWAT」と情報セキュリティ分野の他社製品の販売を行い、機能の優れた海外、主にイスラエルのソフトウェア製品の販売業務および日本国内のサポート業務を行っている。

Point

・ クレジットカードの決済処理システムで国内トップシェア


・ 新規事業としてイスラエルのサイバーセキュリティ製品販売に進出


・ 独自の現地人脈で、先進的なイスラエル企業とのつながりを構築



● サイバーセキュリティ分野への進出


 インテリジェントウェイブが、イスラエルとのビジネスを始めたのは5年ほど前にさかのぼる。2015年、同社でイスラエル関連事業を推進する手塚弘章氏(第三システム開発本部技術主幹 セキュリティ/新規事業)のセキュリティソリューション本部長就任がきっかけだ。手塚氏は、前職時代から20年に渡りイスラエルとの接点があり、イスラエルのサイバーセキュリティシステムの技術の高さに着目していた。一方、インテリジェントウェイブでは、2005年の個人情報保護法制定後、自社の決済関連業務システムに付加価値をつけるために、情報漏洩対策システム「CWAT」の開発に取り組み、当時はその販売を行っていた。情報漏洩対策システムに加え、サイバーセキュリティシステムのラインナップ拡充を図ることになり、手塚氏が中心となって、サイバーセキュリティ先進国のイスラエルの製品を販売・サポートすることになったのである。
 また、創業者の安達一彦氏は、シリコンバレーでの滞在経験からグローバルな視座を有しており、イスラエルのスタートアップの状況にも知見があった。それに加え、日本タンデムコンピュータズ株式会社(現・日本ヒューレット・パッカード株式会社)の社長などの経験を通じて、ユダヤ人コミュニティや駐日イスラエル大使館の方とも交流があったことなどから、イスラエルのサイバーセキュリティシステムの販売事業を進めることを後押しした。

 同社は、2013年10月から、イスラエルのテルアビブに本拠を置くサイベラ(Cyvera)の次世代エンドポイントセキュリティ「Traps」の販売を開始した。その直後の2014年3月にイスラエル系アメリカ人が創業した米サーバーセキュリティ大手パロアルト・ネットワークス社(Palo Alto Networks, Inc.)が同社を買収し、本格的に「Traps」の販売を加速した。パロアルト・ネットワークス社に限らず、米国のサイバーセキュリティ会社にはイスラエル系アメリカ人による経営や、イスラエル企業が本社を北米に移したものが多いとされる。以後、徐々にイスラエルに関連する優れたサイバーセキュリティ製品の販売を拡大していった。
 例えば、インテリジェントウェイブで製品を取り扱うillusive networks社の元CEOシュロモ・トゥボル(Shlomo Touboul)氏とは、手塚氏の前職時代から20年来の付き合いだそうだ。同社とサイバーセキュリティ製品の販売代理契約を結んだ当初、日本で同社製品を販売する他の代理店もあった中、インテリジェントウェイブが最初に大口の販売を達成した。こうした同社の販売実績が現地でも評判となり、イスラエルのスタートアップ・コミュニティの中に浸透していくことになる。当初は手探りだったものの、その後もイスラエル大使館のパーティーやイスラエル輸出国際協力機構(IEI: Israel Export Institute)などを通じて、さらに人脈・つながりを広げていった。現在では、イスラエル側からも新製品や新たな取引先候補の情報が舞い込むようになり、新規開拓に困ることはなくなったという。イスラエル製品を最初に販売を始めた2015年6月期から2019年6月期までの間にイスラエル製品を主とする他社製品販売売上高は2億7000万円から5億3400万円と倍増した。

出所: インテリジェントウェイブ・ホームページ
出所: インテリジェントウェイブ・ホームページ (https://www.iwi.co.jp/solution/cybersecurity/)

● スタートアップのスピード感とリスク

 相手がイスラエルのスタートアップとなると、日本の大企業は、たとえ優れた製品があったとしても契約に二の足を踏んだり、秘密保持契約(NDA)の締結までに時間を要することが多いという。一方、イスラエル企業は、日本の大企業から声がかかれば、大いに喜ぶ。だがNDAを結ぶまでに3カ月もかかると、収入がない中で製品開発を行ってきたイスラエルのスタートアップにとっては、販売につながるとも限らない契約の締結に、時間をかけることは難しいと受け止められることも多いそうだ。こうした問題に対処するため、インテリジェントウェイブではフットワークを軽くすべく、コロナ禍以前は手塚氏と技術担当者の2名体制で年4、5回イスラエルを訪れ、2年ほど前にはテルアビブに事務所も設置した。そこには若干の機材がおいてあり、現地で簡単なテストを実施できるような体制を整えている。また同社は、経営トップの判断が早い社風であり、イスラエルのスタートアップも驚くほどの速さで契約まで進めることが可能であった。
 一方で、サイバーセキュリティ分野だけでも年間200~300社が生まれるというイスラエルのスタートアップとの契約にはリスクも付きまとう。多くが1年以内に廃業に至る可能性が高いことを踏まえ、同社では新しい会社とは、1~2年関係を保ちながら、相手方の従業員数、販売実績などを独自の基準で審査をしてから、契約を行うようリスク回避を行っている。また新たな取引先となる可能性のある会社が出てくると、現地にある独自のネットワークを活用して、信頼のおける企業かどうかの照会を行う。結果として、多くの大企業が取ることのできないリスクを取ることが可能になると言う。反対に、大企業は自社でリスクを取るよりも安全だと、同社を通じて製品の導入を選択する企業もあるそうだ。

 こうした協業にまつわる困難さは、文化的な違いにも表れるだろう。イスラエルならではの宗教・文化・歴史を理解した上で、異文化を異文化として受け入れ、コミュニケーションを図ることが重要である。また、イスラエルのスタートアップには、一度失敗をしても、それを経験したからこそ同じ失敗を繰り返さないだろうという、失敗を許す文化がある。スタートアップを起こして育てるイスラエルのエコシステムの中で、同社もそのサイクルに入り込んでビジネスを行っていく重要性を学んだと言う。
 インテリジェントウェイブでは、今後も自社の事業に付加価値を加えることのできる優れたサイバーセキュリティ製品を取り入れるため、イスラエルを中心に製品の発掘を行っていく予定である。また、これまでに構築したイスラエルとのつながりや人脈が引き継がれるよう、社内で承継の施策を実施していく。

インテリジェントウェイブ 第三システム開発本部 技術主幹 セキュリティ/新規事業 手塚弘章氏
インテリジェントウェイブ 第三システム開発本部 技術主幹 セキュリティ/新規事業 手塚弘章氏

会社情報

会社名

株式会社インテリジェント ウェイブ
(英語表記 Intelligent Wave Inc.)

代表取締役社長

佐藤 邦光

設立

1984年12月27日

資本金

8億4300万円(2019年6月期)

従業員数

413名(2019年6月期)

住所

〒104-0033 東京都中央区新川1-21-2 茅場町タワー

電話番号

03-6222-7111

Website

https://www.iwi.co.jp

取材: 早稲田大学イノベーション・ファイナンス国際研究所
編集: (一財)国際経済連携推進センター

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