理事長挨拶

当財団は2019年8月、名称を従来の貿易研修センターから国際経済連携推進センターに変更し、時代の要請に積極的にチャレンジする姿勢を鮮明にしております。
2019年末以来、新型コロナによる世界的な感染症危機が続いています。世界全体で感染者は既に2億3000万人に及び、死者は500万人に迫ろうとしています。世界経済はIMF(国際通貨基金)が『グレート・ロックダウン』と呼ぶ中で、2020年には3.2%の落ち込みを見せました。21年には緊急経済対策、ワクチン接種の普及もあり回復に転じましたが、コロナ禍の中で、それ以前から問題視されていた「格差」が拡大しました。ショックは需要と供給の両面で発生し、グローバルなサプライチェーンが分断され、医療機器などの輸出制限を伴う経済安全保障を謳った貿易保護主義、自国優先主義が拡大しました。
コロナ禍で世界は変わりましたが、それにも増して注目すべきことはコロナ危機以前から進行していた変化が著しく加速したことでしょう。中国の経済的、軍事的な台頭は米中対立を顕在化させました。先端技術をめぐる覇権争いが激化しています。日本は同盟国である米国と、台頭し、日本経済が依存を深める中国との間にあって、厳しい政策、外交対応を迫られています。日本の動きを世界、とりわけアジアの国々が注目しています。日本の採る選択は日本一国のものではないことを認識すべきでしょう。
地球環境、気候変動問題においては、各国が協力、協働する以外にありません。米国もバイデン政権になって地球環境保護への協力を目指す「パリ協定」に復帰し、脱炭素政策を一気に強化しました。バイデン大統領自身、最近では「気候変動」ではなく「気候危機」と言っています。
環境、気候変動をめぐる世界の議論は、価値観の根本的な変化を感じるように変わりました。1960年代の公害、大気汚染危機に対して、日本は危機意識をもって対応した結果、環境に優しい技術、経済・産業構造に転換し、世界から注目されました。ところが2016年にパリ協定が発効した後、世界のスピードに乗れず環境政策後進国だとする「化石賞」を受けました。2020年10月になって日本は、「2050年カーボンニュートラル宣言」に踏み切りましたが、かつてのような環境先進国の地位を確保してグローバルな貢献ができるかどうかが問われます。
さらに、デジタル化への挑戦、各国間協力の問題があります。デジタル資本主義、データ資本主義の流れにどう対応するか、当センターが直視するべき問題は沢山あります。
当センターは、北東アジア、EUを始めとする各国・地域との連携強化に向けた取り組みに力を入れたいと思います。そのためには、各国・地域の政治・経済情報、政策情報の収集が必要ですし、日本自身が強靭な経済・社会を構築するように、国内におけるしっかりした議論の触媒効果を当センターとして生み出したいと思います。
皆様のご支援に感謝するとともに、一層のご協力をお願いしたします
一般財団法人 国際経済連携推進センター
理事長 小島 明