理事長挨拶

理事長挨拶

  当センターは1967年、貿易研修センター法に基づき官民出資による「貿易研修センター」として設立され、1986年同法の廃止に伴い、財団法人へ改組しました。時代の社会課題に応え「貿易立国に向けた国際ビジネス人材の育成」「貿易摩擦の激化を背景とした対日理解促進」「世界の成長センターたるアジアの発展支援」と取り組みを変遷させてきました。

 2019年に定款変更、翌2020年新たな「国際経済連携推進センター(CFIEC)」が発足し、現在に至っています。
「グローバル化、デジタル化を踏まえた経済連携の強化」に取り組むシンクタンクとして、デジタル保護主義調査事業、北東アジア連携推進事業に着手しました。調査研究事業として「デジタル変革への対応」「新通商ルール戦略」「ビジネスと人権」「経済と安全保障」「北東アジア経済連携」「日イスラエル・デジタル連携」「中国からみた経済安全保障と内外政策」などを実施しています。 また情報発信事業として「国際情勢ウェビナー」「寄稿掲載」に取り組んでいます。

 世界の情勢は、20世紀末のソ連崩壊やその後の東側諸国の民主化、自由経済化への流れもあり、このような大きな流れに沿って世界の政治経済が歩み始めるのではないかとの期待も高まってきました。しかしながら、その後の世界情勢は新たな国家間の対立―民主主義と専制国家間の対立―、覇権を争う米中の抗争、ミャンマーなどアジアや中東・アフリカ諸国におけるクーデターや政治混乱、さらにはロシアのウクライナ侵攻など、依然として軍事力が支配する状況が続いており、改めて人類には「歴史の終わり」はないということが強く認識されるに至っています。

 他方、IT技術の急速な発展は、目を見張るものがあり、単なる情報伝達手段を超えて、生成AIに見られるように人間の仕事を相当程度代替する可能性のあるAI技術も我々の日常生活に着実に浸透してきています。かって半導体等の電子部品や機器などの技術や商品において世界を支配していた我が国は、今では情報産業の分野でも世界に大きな後れを取ってしまいました。急速に進む「少子・高齢化」の問題は我が国経済・社会に大きな影を落としているのは事実ですが、同様の問題を抱える欧州諸国、アジア諸国に比較しても我が国が大きく立ち遅れてしまっている現実は否定できない問題です。

 このような世界情勢や日本が置かれている現状をふまえ、2023年6月当センターは、中期ビジョン“CFIEC 2030”を策定しました。シンクタンクとして目指す方向性を、知的交流プラットフォームの「場」を作ることとし、同時に、精度の高い情報を、中立性をもって分かりやすく迅速に提供することとしています。またステークホルダーを、通商問題の最前線に立つ産、官、学としました。関係各政策官庁、産業界、学識経験者の皆さまと協力、協働しながら、共に、通商問題を核にしながらデジタル社会への取り組みを含め、幅広く我が国の歩むべき道について分析・提言してまいります。そしてその運営においては、内外の専門家にセンターの知的基盤として協力を仰ぎつつ、そのさらなる充実を追求すると共に、事務局機能の強化に取り組んでまいります。

 私は、激動期にある内外情勢の中で「活力ある日本を取り戻す」ために知的な基盤を提供していくことが当センターの大きなミッションと考えています。当センターとしては複雑化する国際情勢をにらみつつ、危機意識をバネに力強く前進する日本を作るための戦略作りに邁進して参ります。当センターの活動に対する皆さまのご理解とご支援を心よりお願い申し上げます。


一般財団法人 国際経済連携推進センター
理事長 林 康夫