「インド研究会」研究会だより (1)
(研究会委員、日本経済研究センター 主任研究員)
Ⅰ.インド研究会(第2期)
1.研究会(第2期)の狙い
・表題:『世界から見るインド経済の可能性と課題―成長の原動力は』(仮)
・目的と問題意識:企業や政策担当者の意思決定に資するとともにその疑問や懸念に答えること、インド経済外交やビジネスにおけるチャンスやリスクを可視化すること、など。第1期(2024年度からの2年間)の活動を踏まえ、今年度は経済とビジネス、インドの経済外交に重点を置き、より実践的な研究を目指す
・座長:第1期に引き続き佐藤隆広・神戸大学経済経営研究所教授
・6月8日に第1回研究会を開催
2.個別の研究テーマ
・インド経済の原動力
・広域経済圏形成の可能性
・成長阻害要因の分析
・インドのFTA攻勢を念頭に、主要国・地域(米、中、EUなど)とインドの関係や、米印の貿易関係、中国企業の投資受け入れなどの実態を分析
・日本企業の事業展開最前線~新分野開拓、他国企業との競合の実情など
・日印経済協力~連携を深めるべきアジェンダ
3.第2期で新たに導入する取り組みと視点
・インド経済のマクロ分析~財政構造、雇用、公共政策など
・国際金融界とインドの関係、インド株式市場の動向
・経済けん引役としての人口知能(AI)の実力、GAFAMなどのITプラットフォームの動向
・製造業サプライチェーンや人的移動
Ⅱ.インド経済・月次情勢報告(5月)
・5/10…モディ首相が国民に対し、外貨節約のために海外渡航や金の購入の自粛を要請
~中東情勢の緊迫化でインド経済にも大きな影響が出るという危機感の現れとみられる
・5月中旬に発表された26年4月のインフレ(CPI)率は前年同月比+3.48%。引き続きインド中銀(RBI)のターゲット内に収まったが、5月中旬からは国営石油会社が相次いでガソリン、軽油の値上げに踏み切っており、5月以降のインフレ加速が懸念される。
(参考:インド統計・計画実施省=MoSPIのリリース)
latest_release_1781259853555_04875571-19f2-4830-9cad-3a1bfd5992e1_Press_Release_of_CPI_for_May_2026.pdf
・5月下旬、米司法当局は贈賄など数々の疑惑で度重なる株価下落に見舞われていた新興財閥アダニ・グループに対する起訴を取り下げ。アダニは空港や港湾などのインフラやLNG(液化天然ガス)といったエネルギー部門を得意とし、モディ政権との緊密ぶりでも知られている。今回の決定でインド国内外でのアダニの事業はさらに拡大する見通し。
・インド気象庁(IMD)が5月末に発表したモンスーン期(6~9月)の降雨量予想は、平年比マイナス10%と11年ぶりの少雨見通し。インド経済に大きなインパクトを与えるモンスーンの動向に、インド国民は一喜一憂。
・さらにインド亜大陸に少雨をもたらすエル・ニーニョ現象の影響も懸念されている。6/5のRBI金融政策会合でもマルホトラ総裁が「原油価格上昇によるインフレ」とともに「少雨による農業生産、農村需要への影響」に懸念を表明した。
(参考:インド気象庁のモンスーン情報)
mausam.imd.gov.in/imd_latest/contents/monsoon.php
・6/1 インドと中東・オマーンとのCEPA(経済連携協定)が発効~ここ数年のインドによるFTAネットワーク構築の動きが引き続き活発であることを示した。
・6/5に発表された2025年度のGDP成長率は前年度比+7.7%。個人消費や設備投資も回復、各産業とも堅調。しかしRBIは26年度のGDP成長率見通しを前回の6.9%から6.6%に下方修正。インフレ(消費者物価指数上昇率)も同4.6%から5.1%へと引き上げ。政策金利(レポ・レート)については5.25%で据え置き。
(参考:MoSPIのリリース)
latest_release_1780655857536_5ac01869-ca4a-422d-b7a7-57b81da60932_Press_Note_on_GDP_Estimates_for_Q4_2025-26_and_PE_FY_2025-26_F.pdf
参加者からのコメント
・「国民に外貨節約を呼びかけたモディ首相の演説は異例。実際に金や銀の輸入関税を引き上げていることから、この外貨危機を本気で乗り切ろうとしていることがうかがえる」
・「消費者物価指数(CPI)上昇率はRBIのターゲット(6%±2%)に収まっているが、卸売物価指数(WPI)の方は9%に近づき(4月は+8.26%、5月は+9.68%)、燃料だけみると、4月の上昇率は年率24.9%に達している。足元の状況はよくない」
・「インフレ以外にも、通貨ルピー安がかなり深刻」
・「インド政府は外貨流出を抑えるためのルピー防衛策~例:キャピタルゲイン減税などによる投資資金の流出防止策~を打ち出しているが、今後も為替相場は要注目」
※6/16時点で為替相場は1ドル=94.5ルピー前後で推移。5/20時点では同96.8ルピーまで下落。
