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配信日:2008年2月1日

IISTアジアインダストリアルツアー「愛知産業遺産視察」

マレーシア大使館 商務部
公使参事官
バーリア・モハマッド・タミル


愛知県は、我が国の産業技術発展において重要な役割を果たしている非常に重要な産業地域のひとつである。そのため、愛知県には訪問して直接目にする価値のある産業遺産が数多く存在する。財団法人貿易研修センター(IIST)では、アジア諸国の在日外交官を対象として、こうした産業遺産やその他の産業施設を訪問することにより、この地域がたどった独自の産業発展のプロセスを理解してもらうため、2007年11月27日から同28日までアジアインダストリアルツアー「愛知産業遺産視察」を実施した。経済産業省中部経済産業局の協力を得て実施した同ツアーには、アジア12カ国の在京大使館から12名の外交官が参加した。

 私が初めて参加したIISTのアジア インダストリアルツアーは北海道産業視察で、大変実りの多い経験であった。この視察に参加することにより、私は北海道の地域経済や産業について、実際に自分の目で見て学ぶだけでなく、この地域のビジネスマンや関係者の方々と新たなネットワークを構築するチャンスを持つことができた。

 IISTのアジア インダストリアルツアーは、在京の外交官が日本の経済分野に対する理解を深めるうえで有効な足がかりとなるべく、よく調整されている。この視察参加者は、参加者相互のみならず、地方自治体や業界関係者とのネットワーク作りや情報交換を行う多くの機会を持つことができる。

 IISTアジアインダストリアルツアー「愛知産業遺産視察」の招待状を受け取った時から、私はこのツアーに参加するのを心待ちにしていた。愛知県の県庁である名古屋市とその近郊は、国内3番目の産業集積地である中京工業地帯を形成している。愛知県では、陶磁器、繊維、自動車や航空機を製造しており、日本の産業技術革新において顕著な役割を果たしてきた。それゆえ、愛知県の経済・産業活動への理解を深めることは有益なことである。

 今回、実際にIISTアジアインダストリアルツアーに参加して、期待どおり理解を深めることができたことをうれしく思っている。

 堀川運河、名古屋港、ノリタケの森、トヨタ産業技術記念館、博物館「酢の里」やデンソー高棚工場を訪問することにより、参加者は、愛知県における独特の産業発展のプロセス、産業遺産や近代的産業について知識を深めることができた。さらに、IISTが招待した5名の産業遺産専門家(日本の清水慶一先生、フランスのルイ・ベルジュロン先生、ドイツのハンス・ディーター・コリネット先生とアンケ・クーマン先生、英国のキース・ファルコナー先生)の参加を得て、私たちは、建設的な意見交換を行う、有意義な機会を持つことができた。

 堀川運河と名古屋港のクルーズに関しては、赤崎まき子氏と大橋公雄氏による説明、オリバー・マイヤー氏の補足により、多くの情報を得ることができた。堀川運河が400年前、名古屋城が築城された時代に掘削されたことを知った。また、クルーズを通じて、納屋河岸橋(1913年建造)、松重閘門(1930年建造)、白鳥貯木場(1610年開削)、三井の木造倉庫群(1954年建築)、跳ね上げ橋(1927年建造)、人造石の土手、などの産業遺産を保存することの重要性を学ぶことができた。なかでも松重閘門は、産業遺産としての重要性を認められ、名古屋市指定文化財として認定されているそうだ。

 ノリタケの森の訪問は大変楽しかった。ここで、私たちは陶磁器産業の生誕の地を見学した。今から100年前の1904年に作られ、その後1975年まで操業していた、日本陶器合名会社の最初の工場である赤レンガ造りの工場である。その工場こそ、まさに日本における西洋食器の歴史を象徴するものだ。クラフトセンターでは、生地の製造から絵付けまでのプロセスを通じて、ノリタケの有する熟練の技と製造技術を目の当たりにすることができた。また、とても感銘を受けたのが、多くの子ども達がノリタケの森を訪問して、早い段階から産業遺産に対する興味を持つことができるということだ。ノリタケの森には、他にも、森村・大倉記念館CANVASといったアトラクションゾーンのように、子どもたちにとり魅力的なゾーンがたくさんある。
 トヨタ産業技術記念館は、私が個人的に最も気に入ったところである。この記念館に入るとすぐに訪問者の目につくのが、トヨタの創立者である豊田佐吉が重きをおいた「研究と創造の精神」というメッセージである。このメッセージは将来を担う世代に対し、常に忍耐強くかつ創造的であり、ものづくりに対する興味を持つことを奨励するために、展示されている。また、現在自動車会社であるトヨタ自動車工業(株)がもとは紡績会社であったという事実は、私にとって驚きであった。ちなみに、この記念館はその豊田紡績本社の工場跡地に建っている。

 トヨタ産業技術記念館の見学中、私は子ども達が機械理論やメカニズムを学ぶことのできる、テクノランドというスペースでいろんな活動を楽しんでいるのを見た。そこで子ども達は、センサー回路ブロックを利用して簡単な機械を作ったり、人力ふみ車のペダルを漕いで人力で車を稼動させたり、「風に向かって立て」の大きな扇風機から出る強風に立ち向かうチャレンジができる。 また、子供達には記念館から、無料でワークブックが提供される。この本を利用することにより、子供達は繊維機械館や自動車館といった歴史ゾーンの興味深い情報をあますことなく吸収することができる(この館内では多くの機械展示品に実際に手を触れてみることができる)。私は、このワークブックをガイドとして利用することにより、子供達にとりこの記念館訪問がより役立つものになっていると思う。後日、私はこの記念館に遠足や修学旅行できた子供達は無料で入場でき、とても人気のある見学先であると聞いた。このような形を後日、自国のマレーシアに紹介できると思う。

 私たちは、半田市にある日本で唯一存在するお酢の博物館である「酢の里」も訪問した。博物館は1986年にオープンしたが、その建物は、創業者が1804年に初めて米ではなく酒かすからお酢を作り出した貯蔵庫を改造したものであるとのことだ。また今回の訪問を通じて、日本の酢生産の70%を製造している(株)ミツカン酢による、お酢作りの古来からの技法と近代的な方法についても学ぶことができた。

 ツアーの最終訪問先はデンソー高棚製作所であった。同工場で、私たちは自動車部品、メーター、ナビゲーションディスプレー等の製造過程を見学した。デンソーの製品や製品製造機械を開発するために、設計、生産、材料部門の技術者達がいかに生産を担当する技能者達と協力しあって働いているかを目の当たりにすることができた。また、同社従業員の技術向上のために実施している人材育成プログラムについて説明を受けた。デンソー関係者によると、日本の多くの工場が人材確保の問題で悩む中、同社についてはそうした問題はないとのことだ。

 最後に、今回の参加者一同を代表して、このツアーが、単に新たな知識やコンタクト先を得ただけでなく、建設的な情報交換やネットワークの構築という意味からも、非常に貴重な経験であったことを申し上げておきたい。


 
 
 

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