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配信日:2007年9月18日

2007年 IIST アジアインダストリアルツアー「北海道産業視察」

フィリピン共和国大使館
商務参事官

マウイノ ハレスコ


「かねてよりアジア諸国を中心に、北海道地域における農畜産業、及び観光による経済活性化への取組みに対する関心が高まっている。こうした状況を踏まえて、財団法人貿易研修センター(IIST)では、アジア諸国の在日外交官を対象として北海道地域の経済産業の現状を理解してもらうため、2007年7月10日から同12日まで北海道インダストリアルツアーを実施した。経済産業省(METI)北海道経済産業局の協力を得て実施した同ツアーには、アジア14カ国の在京大使館から14名の外交官が参加した。」

 人は、訪れたことのない地に想いをはせる。もちろん、私もそうだ。北海道への産業視察を呼びかける招待状を IISTから受け取ったとき、私は即座に参加を決めた。SMEが日本で、特に農業の方面で、 どのような役割を果たしているのか知りたかったからだ。この視察で得たものは予想以上に大きかった。
 ツアーの内容に関しては、農業におけるSMEとこれらを支援する政府機関との間でバランスよく構成されていた。また、人文科学的側面から見ても、音楽と舞踊を通して先住民の方々の紹介があり、さらに、北海道伝統美術工芸村、雪の美術館および旭山動物園への訪問というように、バランスがよかった。

 よつ葉乳業の工場では、この工場が、自分たちの飲む牛乳を生産しようという酪農家たちによって設立されたことを知った。それまで、日本では、牛乳や乳製品の生産は企業に管理されていた。牛乳の価格は大手乳業メーカーの采配の下に置かれ、酪農家たちはこれに口出しできない弱い立場にあった。
 この工場に牛乳を供給しているのは、それぞれの牧場で牛を育てている酪農家だということであった。牛乳の集荷は農協が行い、牛を飼育するための設備拡張その他のサービスも農協が行う。農協を運営しているのは地方自治体ということで、酪農家に対する自治体の支援の好例といえる。

 この工場を訪問したのち、酪農家に対する政府の支援方法について、十勝支庁の職員から説明を受けた。酪農家は経済全体に対して重要であるとのことであった。また、経済の発展を促進するための3本柱として、北海道産品の販売の促進、北海道への観光客の誘致、最後に、外国からの北海道への投資が挙げられるとした。アルプスに似た粉雪でスキーを楽しむために北海道にやってくるオーストラリアからの観光客が増加したことによって、これまでに北海道の観光業界と不動産業界への投資を伸ばしており、これがまた、北海道産農産物に対する外国市場の拡大にもつながっているとのことであった。

 夕食では、北海道の先住民であるアイヌ民族の文化の紹介を受けた。アイヌ舞踊は自然崇拝を反映するもので、すべてのものに神が存在しているため、すべてのものが崇拝の対象となっている。

 翌日は、帯広市川西農業協同組合(JA)でのブリーフィングから始まった。ついで、ヤマイモの生産と梱包を視察した。ヤマイモは、雨量と土壌の条件から、北海道のこの地域が最も栽培に適するという。道外での消費量が多いことから栽培にヤマイモが選ばれたということだ。これは、政府と農家が協力して生産・促進のための産品を選んだ良い例である。

 次に八千代公共育成牧場を訪問し、子牛の放牧に使う公共の土地や設備を政府が提供していることに関して説明を受けた。これもまた、政府と酪農家の協力関係を示すすばらしい例である。「飼料供給拠点の維持による酪農製品生産の合理化」を目的にしたこの牧場だが、放牧に使われる広大な土地が観光客のお目当ての地にもなった。説明では、子牛を放牧のためにここに持ち込むことができ、他の牛や馬は、料金を払えば、オーナーである酪農家に代わって管理されるということである。消費者との関係を尊重しているこの牧場は、健全な雰囲気を作り上げるために、フェスティバルその他のイベントを催している。酪農家がその職務を果たし、同時にそのイメージの向上や観光客の誘致という面でも役割を演じることができるということを我々は学んだ。さらに、この牧場は、子供たちを対象にソーセージ作りの基本を教えている。我々は、酪農業と観光業が共存できるという印象を胸に八千代公共育成牧場をあとにした。実は、今回のツアー参加者の何人かは、牧場での宿泊料金を訊いていた。再び訪れて、子供の頃の楽しみを追体験しようというのがその理由だ。

 ふらのワイン工場も、普及の対象とする産品の選択において、政府が地元酪農家を支援している例の一つ(ここではぶどう園)である。
 ファーム富田では、1人の男の夢がその環境を変えるのを目の当たりにした。富田氏は、ラベンダーから植物性オイルを作り出したいと考えた。その過程で、彼は自分のラベンダー農園を、その地域を、そして北海道を観光の目的地にしてしまったのだ。このことからも、農業が観光の目玉となることがよくわかる。毎年、何万人もの観光客がファーム富田を訪れ、畑のぬくもりに浴し、ラベンダーの香りを楽しむという。

 ツアーの最終日には、旭山動物園、北海道伝統美術工芸村、雪の美術館を順に巡った。旭山動物園では、動物を愛する人々に何ができるかを目の当たりにした。動物園の閉園とそれに続く動物たちの移動を避けるために、動物園で働く人々は懸命に努力し必死で働いた。どんな天気の日でも誰もが楽しめるように施設を設計した。この動物園がいま、日本で一番有名な動物園であることは疑いようがない事実である。

 旭川から飛び立った機中、成功した旭山動物園のイメージとともにアイヌ音楽のリズムが私の胸によみがえった。人々が自然に親しみ、その可能性を認める人々が集う土地である北海道だからこそ、旭山動物園の改革は実現したのである。

 今回の良く企画されたツアーに対し、我々に同行された IIST スタッフ全員に深い感謝の念を表明したい。今回の北海道農協訪問で、酪農家と政府の緊密な関係の強化によって、農家が国の経済発展においてより生産的な役割を担えることを知った。さらに、今回のツアーによって、外交官としての日々の職務における協力関係の強化に関して、参加者が互いのアイデアを交換する機会を得たことに関しても、感謝の意を表したい。
 
 
 

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