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配信日:2001年7月26日

地域貿易協定/経済連携協定の積極的活用

経済産業省 通商政策局 国際経済課
課長補佐

畠山 陽二郎

長野冬季オリンピックのスキージャンプ競技での日本選手の華々しい活躍の後、スキー板の長さ制限が変更され、短身の選手は板を短くしなければならず、長身の選手は従来より板を長くできるようになった。板の長さは空気抵抗の多寡を決め、それが飛距離に直結するため極めて重要だ。欧州選手に比べて背の低い日本選手にとっては極めて不利なルール改正であり、その後の日本選手の不調の原因はこのルール変更だとする論は多い。また、ノルディックスキー複合(ジャンプとクロスカントリー二種目)でも、荻原健司選手が年間チャンピオンを獲得すると、クロスカントリーの配点を高めるルール改正が行われた。体力がある選手に有利なクロスカントリー競技の配点が高まったことで、荻原選手は苦戦を強いられた。自らの体力・技術を磨いても、ルール変更の不利はなかなか乗り越えられないのである。
 経済の世界でも同じである。冷戦構造の崩壊、情報通信技術や運輸手段の飛躍的な発達などにより、世界経済の一体化が進み大競争時代に突入した。経済活動は一国の中には収まらず、スポーツの国際大会と同様、世界との競争に勝ち抜かなければならない。こうした中、自国経済の不効率な部分を削ぎ落とし、成長する見込みのある部分を伸ばすという構造改革を進めるだけでは十分とは言えない。いくら効率的な経済を作り上げても、ルール次第では競争力を発揮できないことがあるからである。自国の特徴が活かされるようなルールや事業環境を世界に少しでも多く作り出すことは、構造改革とともに進めなければならない重大な課題なのである。
 こうしたルール作りを行う場としては、WTO等のマルチの交渉が重要である。交渉でいかに主導権を握れるかが勝負どころとなるが、成功するためには同じ立場を主張する仲間がいることが不可欠である。利害の共通する相手との地域貿易協定は、こうした仲間作りに有用である。また、自国の特徴を活かせるルールや事業環境は、世界規模で導入されるのが理想だが、多くの国のコンセンサスを得るのは難しくまた時間もかかるため、まずは数カ国や一定の地域内で実現するのでも有益である。そこでのルールなどが世界のモデルとなり得るという意味でも、地域貿易協定の活用の意義は大きい。世界でNAFTAやEUなどの地域貿易協定が90年代から飛躍的に増加しているのも、こうした考え方に基づいてのことである(See Figure)。
 我が国としても、こうした考えに基づき、WTO等のマルチ交渉と並行して地域貿易協定を積極的に活用することとする。グローバル化した経済の下では、水際の障壁だけでなく、従来は各国の中で定めらてきた経済制度や慣行が事業活動に大きな影響を与えるため、水際規制の撤廃や経済諸制度の調和等を幅広く含んだ地域貿易協定(=「経済連携協定」)を進めることとしたい。
 以上の考え方を踏まえた上での我が国の実際の取組の現況は以下のとおりである。まず、シンガポールとの間で関税の撤廃だけでなく、サービス、投資、人の移動、電子商取引関連制度の調和等幅広い分野を対象とする経済連携協定の交渉を進めているところである。来年には我が国の第一号の地域貿易協定が誕生することとなろう。次に、地域貿易協定がないことが我が国の進出企業の不利益をもたらしているメキシコとの経済連携協定等についての研究を両国間で行うこととしている。
 今後は更に、我が国との経済相互依存関係の強く、また通貨・エネルギー等の分野で共通の利害関係を有する東アジアとの経済統合についても検討を加えるべきである。こうした取組はアジア諸国の経済的安定をもたらすものとすべきであり、その結果として域内の政治的安定・安全保障の向上にも繋がるものと期待できる。

 なお、以上述べたことは、筆者の個人的見解であり、政府又は経済産業省の見解ではないことを最後に申し添えたい。



 
 
 

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