東日本大震災からの産業復興の現状と取組
経済産業省 東北経済産業局
局長
相樂 希美
震災から7年が経ち、東北の被災地域では新たな施設のオープンや復興拠点整備の認定など、復興の歩みが徐々に進んでいる。被災地域の復興加速と自立的発展に向け、関係機関と連携しながら、基幹産業の業績回復・交流人口拡大等の取り組みに尽力していく。
はじめに
東日本大震災における大地震、津波、更に原子力発電所事故から7年が経過いたしました。この大震災により東北地域の産業は甚大な被害を受けましたが、自治体や地元産業関係者の懸命なご努力に加え、各方面からの様々なご支援等によって、復旧が着実に進展しております。この場をお借りして深く御礼申し上げます。
産業復旧の状況
東北地域の経済状況について「鉱工業生産指数」でみてみますと、震災後大きく落ち込んだ生産は、平成24年初めには震災前とほぼ同水準まで回復しており、地域全体では回復基調にあるものと思っております。
他方、沿岸被災地域では、依然、土地の嵩上げや土地区画整理事業が進められており、また、原子力災害被災地域においても、引き続き、グループ補助金等による復旧・復興に向けた支援が必要なものとなっております。
被災地域における復興に向けた取組
まず、インフラ整備が進捗している宮城県、岩手県の津波被災市町村では、それぞれ具体的な商業・まちの再生に向けた取り組みが進んでおります。
平成29年4月には、岩手県大船渡市において、商業施設等復興整備補助事業を活用した商業施設「キャッセン大船渡」、岩手県陸前高田市では「アバッセたかた」がオープンいたしました。
また、平成29年6月には、宮城県石巻市において、地域・まちなか商業活性化支援事業を活用した「いしのまき元気いちば」もオープンいたしました。施設内に地元飲食店や小売店などが出店しており、まちの復興のシンボルとして賑わい創出拠点となることが期待されております。

キャッセン大船渡(大船渡市)

アバッセたかた(陸前高田市)

いしのまき元気いちば(石巻市)
水産加工業は、沿岸被災地域の雇用集積産業でもあり、かつ三陸の豊富な水産資源は、将来的にも大きな付加価値を生み出す可能性もあることから、水産加工商品の国内外の市場開拓に向け、平成28年3月に商工団体、行政、支援機関からなる「三陸地域水産加工業等振興推進協議会」を設立。「JAPANブランド育成支援事業」の他、関係省庁と連携をしながら、アジア地域等での販路開拓等を目指す「三陸(SANRIKU)ブランド」の確立や海外展開等を積極的に支援しております。
併せて、三陸地域を紹介するイメージビデオを制作しておりますので、是非ご覧いただければ幸いです。
[YouTube] 三陸ブランドイメージビデオ「SANRIKU JAPAN」
また、福島県の原発事故による避難指示からの解除がなされた原子力被災市町村も増え、まちの再生に向けた取り組みが進んでいます。交通インフラをみても、鉄道の運休区間が順次再開し、一部国道の一般車両の通行制限が解除されるなど、生活環境の整備が一歩ずつ前へと進んでいます。
このような中、各まちの状況をみますと、例えば、平成29年7月には、川俣町の「とんやの郷」、平成29年8月には飯舘村の「いいたて村の道の駅 までい館」などの商業施設がオープンしております。また、被災した事業者のなりわいの再建・自立に向けた取組においても、関係機関と連携しながら、東北経済産業局としても福島の一刻も早い復旧・復興に尽力していきます。

いいたて村の道の駅 までい館(飯舘村)
なお、経済産業省では、「福島の今」を分かりやすく伝える映像を制作しております。こちらもご覧いただければ幸いです。
[YouTube]「おかえり ふくしま」
[YouTube]「The Next Step ~福島の未来を共に~」
このほか、当局では、「震災復興ツーリズム」の取り組みも推進しております。これは、東日本大震災における減災・防災上の教訓等を広く普及し、現地視察等を通した交流人口の拡大や、未だ根強く残る風評被害の払拭に繋げていくものです。
平成28年6月には、大阪市内でシンポジウムを開催。平成29年8月には、同様の取り組みを高松市内で開催し、企業・行政機関等を中心に延べ約380名の方々に来場いただき、地域の現状、防災・減災の取組などについて理解を深めていただきました。

「平成29年度 四国企業防災戦略トップセミナー」
(平成29年8月開催 場所:高松市)
東北地方は、本州北東部に位置しており、青森県・岩手県・宮城県・秋田県・山形県・福島県の6つの県で本州の約3割を占める広大な地方です。自然豊かな環境のもと、四季折々で様々な魅力を体験することができます。
例えば春。厳しい東北の冬が終わり、山に残る雪の白と桜の桃色・草木の緑に包まれます。福島県福島市の「花見山公園」は、「福島の桃源郷」と呼ばれ、たくさんの種類の花々が咲き乱れる姿に目を奪われます。また、東北各地のお花見スポットでは、満開の桜に多くの人が春の訪れを実感します。

1935年頃から初代園主・阿部伊勢次郎氏と長男の二代・一郎氏が所有する山の開墾を始め、出荷用にウメやサクラなどの様々な花木を植えたことに始まる。父子で山を切り開いて丹精を込めて木を植え続け、色とりどりの美しい花の山になった。「多くの人に見てもらいたい」との思いから、1959年、散策路を整備し、所有者が公園として無料開放している。花見山公園(福島県福島市)。

大曲の花火大会。1910年から続く歴史を誇り、日本三大花火大会の一つと言われる。全国から選りすぐりの花火師だけが参加できるコンテスト形式の全国花火競技大会。自ら製造、持参して打ち上げることが大会への参加条件で、デザイン、色彩、創造性を重視して審査される。(秋田県大仙市)

日本一の芋煮フェスティバル。山形では秋になると仲間や家族と一緒に河原に集い、芋煮の鍋を囲む文化がある。このイベントでは、直径6mの大鍋で、里芋3トン、牛肉1.2トン、こんにゃく3500枚、醤油700リットル、お酒90リットルを6トンの薪で煮炊きする。使用するのはほとんど全て地元の美味しい食材。土地の豊かな自然がもたらす豊富な農産物と結びついた秋の風物詩である。(山形県山形市)

こたつ列車。岩手県の東沿岸、リアス式海岸を走る三陸鉄道の北リアス線。久慈駅-宮古駅までの約1時間40分をこたつに入りながら旅が出来る冬季限定イベント列車。掘りごたつを挟み、お弁当やお菓子を食べながら車窓を眺めて会話を弾ませる。北国の冬ならではの、贅沢でゆったりとした時間である。
東日本大震災から7年、東北地域は復興に向けて、力強く歩みを続けています。皆様も是非、観光やビジネスで東北にお越しください。
これからも東北地方を、引き続きよろしくお願いいたします。