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シリーズ:「地域の活性化(2)」関わる人と想いをかたちに(高知県 室戸市) | 一般社団法人 うみ路 代表理事 蜂谷 潤【配信日:2015/07/31 No.0245-246-0981】

配信日:2015年7月31日

シリーズ:「地域の活性化(2)」
関わる人と想いをかたちに(高知県 室戸市)

一般社団法人 うみ路 代表理事
蜂谷 潤


 岡山出身室戸在住28歳。7年前の夏、高知の東端「室戸」を訪れる。温かい人や地域資源に魅了されて移住。アワビや海藻の陸上養殖、地元漁師さんや地域のお母さんたちとの加工品作り、地域内でのカフェ経営他。地域内外の交流を図り今日に至る。


 太平洋に突き出した陸地、そして台風銀座とも言われた高知県の南東端に位置する室戸岬。高速道路はもちろん、電車も走らない、田舎の小さな町が少しずつ、表情を変えつつある。2011年の秋の訪れを感じ始めた9月中旬の早朝4時、室戸中は歓喜の渦に包まれていた。室戸市が国内で当時5箇所目となる世界ジオパークの認定地域として決定したからである。室戸の地形や地質。さらには、そこで暮らす人々の活動が評価されたからである。
 春先から夏場にかけ、室戸岬周辺海岸を歩いていると、アワビより、もう一回り小さなトコブシという貝を素潜りでとってきている漁師や、浜に打ち上げられたテングサと呼ばれるトコロテンの原料となる海藻を集める女性に出会うことができる。また、港に行くと定置網漁という漁業により魚を大量に水揚げしており、海の資源がとても豊かな土地である。室戸は海の地形も特異的であり、室戸沖へ2kmも進むと、水深は500m程にもなる。そのため、室戸近海で深海の水を取水でき、日本で初めて海洋深層水の取水を始めた場所としても知られている。

アワビ

アワビ

トコブシ

トコブシ


 栄養豊富な海洋深層水は、色濃く香り高い海藻を育てる上で最適である。大学で海藻の研究をしていた私にはとても魅力的であった。実際に、その海洋深層水を利用し、青のりを陸上養殖している施設もある。その施設は1日に約1,500tも海洋深層水を利用しており、1,500tの海洋深層水を利用するということは、同量の排水も行う。しかし、排水といっても、海藻は植物であり水を汚さず、浄化する役割を持つ。そのため、海藻養殖後に出る排水を2次水として利用できないか、それをテーマに研究を進めた。室戸という地に根を張り研究を行うようになってからは、地域の人々の想いに触れることも多くなった。室戸はトコブシの産地であるが、年々水揚げ量も減少し、また、漁期でも水揚げは天候や、波の影響に左右されるため、常に食べることはできない。室戸で目玉のトコブシが通年はもちろん、漁期であっても提供できないので、地元の民宿やホテルでも心配は尽きないのである。そこで、考えられたのが、トコブシを種苗から生産し放流し資源を豊かにし、また、水揚げされたトコブシを蓄養することで、通年した提供を行う。このような一貫した生産管理を行うことで、資源は枯渇することなく、漁師は水揚げ量を維持でき、地元漁協は潤い、また、通年出荷できることで、飲食店や、民宿等も安心して、トコブシを提供できる。その結果、室戸のファンが創出されるのである。そして、研究を着手して5年後"一般社団法人うみ路"を立ち上げ、今は小規模ながら海藻とトコブシやアワビを複合的に養殖する事業を展開している。

アオノリ養殖

アオノリ養殖

 そのような養殖事業を始め、地域の人々と交流を深める中で、地域の人々との価値観の違いに驚かされることも少なくない。よく言われる言葉だが、"ここには、何もない"という言葉を室戸でもよく、耳にする。室戸では、定置網漁により、5月から6月にかけてソウダガツオという魚がまとまって一日の漁で50トンほど、水揚げされる。それが隣の漁港でも、その隣の漁港でも同じような光景が広がるのである。しかし、一度に大量に水揚げすることで、需要と供給のバランスは崩れ、1匹30円前後と価格は暴落してしまう。一方で、地域で暮らす女性は、仕事がないから市外へ働きに行くということさえ耳にする。室戸は好きだけど、仕事がないから出ていくというので、余計に残念である。しかし、目の前の漁港で大量に水揚げされる価値の低い魚にひと手間加えれば、必ず価値をうみだせるはずだ。1匹30円で仕入れて少し手を加えて、100円で売ることができれば、70円はそこで手を動かす人のお小遣いになる。そこから、地域の女性達と魚の加工チームを作って動き出した。しかし、実際に、加工品を作ろうと手を加えようと思ってもアイデアがでてこない。関わる人が限定されると、考え方も凝り固まってしまう。それを打開するため、多くの人に関わってもらう、室戸ツアーというツアーを企画した。そこでは、県外での活動拠点とする料理人やデザイナー等、業種を問わず多くの人々を巻き込み、水揚げから、調理して食べるところまで体験してもらうのである。そうすると、関わってもらう人達から、いままで思いもしなかったような料理が提案される。その中から、フランスの保存食であるソウダガツオのコンフィが提案され、今も地域のお母さんたちと、製造を行い、販売している。

コンフィ作りの作業

コンフィ作りの作業

 様々な活動に関わらせてもらう中で、継続している事業に共通して言えることがある。それは、活動の中心にいる人、また、それに関わる人々が無理なく本気で楽しめているということだ。今、日本では地方創生という言葉が広がり、地域活性化という目的に向かって多くの人が走りだしている。しかし、気をつけなければならないことは、地域活性化というのは、実体がなく、結果論であるということ。それぞれの人が自分のやりたいことに挑戦し、活き活きと活動することで、初めて地域は活性化するのである。今、地方では良くも悪くも補助してもらいやすい環境が作られている。だからこそ、一つ一つの動きを慎重に、自分がどういった想いでいるのか何をしたいのか自問自答し、自分自身がやりたいことに挑戦したり、周りで挑戦したい想いを抱いている人の一歩をサポートしたりするような動きができれば、それは結果として地域が活性化し、地方創生する一番の近道になると考えている。
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