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連載 キーワードで知る日本 「原油安」 【配信日:2015/06/30 No.0244-0978】

配信日:2015年6月30日

連載 キーワードで知る日本
「原油安」

 石油輸出国機構(OPEC)は2015年6月5日にウィーンの本部で開いた総会で、原油生産目標を日量3000万バレルに据え置くことを決めた。市場は既に据え置きを織り込んでいたことから、決定後も原油価格の極端な変動はなく、1バレル=60ドル前後で推移している。OPECが減産を見送ったことで、当面は供給過剰の状態が続くとみられる。原油安の長期化は日本経済にどのような影響をもたらすのだろうか。

 甘利明経済財政担当相は、原油価格が昨夏以降の下降局面での底値に達しようとしていた2015年1月、「原油価格がピーク時(1バレル=100ドル強)から半分になると、日本経済に7兆円のプラスになる」との認識を示した。

 甘利氏は、内閣府の試算によれば原油価格がピークから3割下がれば日本経済には4兆円のプラスとなると指摘。発言当時に比べて、為替の円安が進んでいるため試算の前提は異なっているはずだが、それでも現在の1バレル=60ドル前後の水準で推移すれば、100ドル超だった1年前に比べて数兆円規模のプラス効果が見込めそうだ。

 エネルギー資源の大半を輸入に頼っている日本にとって、原油安は輸入コストの減少を通じて企業収益を押し上げるほか、ガソリンや灯油の価格、電気代の下落等を通じて、消費者にも大きなメリットがある。特にガソリンや電力などの投入比率が高い運輸や商業、建設など非製造業にとってプラスの効果が期待できるとされる。安倍政権の経済政策「アベノミクス」の下で進んだ円安で打撃を被った業種も多いだけに、原油安はアベノミクスの副作用を緩和する効果がありそうだ。

 一方、石油元売り会社や商社は大きな打撃を受けた。JXホールディングス、出光興産、コスモ石油の石油元売り大手3社は、原油安の影響を受けて、2015年3月期連結決算で純損益が軒並み大幅な赤字に陥った。各社とも備蓄原油に巨額の在庫評価損失が生じたほか、資源価格の下落による石油や天然ガスなど海外の開発事業での減損損失がボディーブローのように効いた。

 一過性の損失である在庫評価損と比較し、上流の石油や天然ガス開発事業の減速は、より長期的なダメージが予想される。各社とも、人口減少や省エネルギー技術の進展に伴う日本国内の石油市場の縮小が避けられぬ中、経済成長著しい新興国での需要の伸びを期待して資源開発事業を含む事業の多角化を進めてきた。

 だが、新興国経済の減速に加えて、OPECと、急速に生産を拡大させる北米シェールオイルの生産者とのシェア争いを背景に原油の供給過剰状態が長期化の様相を見せている。石油元売り会社は「上流事業は足の長い事業で、いったん始めた事業は継続しないと成果が出てこない。目先はコスト削減と不急な投資の先送りを行いつつ、長期的にはポートフォリオの入れ替えも検討が必要だ」(JXホールディングスの松下功夫社長)と、我慢比べを覚悟する発言が出てきた。

この記事は専門のジャーナリストに執筆をお願いしています。
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