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天然資源・エネルギー・環境に関する国際貿易の法と政策シンポジウム—持続的発展への展望 | 長島・大野・常松法律事務所 (顧問) 元WTO上級委員会委員/東京大学 名誉教授 松下 満雄【配信日:2015/04/30 No.0242-0972】

配信日:2015年4月30日

天然資源・エネルギー・環境に関する国際貿易の法と政策シンポジウム
—持続的発展への展望

長島・大野・常松法律事務所 (顧問)
元WTO上級委員会委員/東京大学 名誉教授
松下 満雄

1. シンポジウムの趣旨
 このシンポジウムは2015年3月2日及び3日の両日にわたり、霞が関ビル35階の東海大学校友会館において開催された。そのテーマは、天然資源、エネルギー、及び、環境に関する国際通商法及び政策である。近時、世界人口の爆発的増大、新興工業国(中国、インド、ブラジル、南ア、ロシア、その他)の急速な台頭、気象変動に伴う農業への影響、砂漠化、水不足等の要因によって、天然資源の将来的不足が懸念され、資源国においては資源保存と共に、資源の輸出を制限する傾向もある。最近の中国によるレアアースの輸出制限はこのような例の一つである。これらの動向は天然資源(エネルギー資源を含む)に乏しく、その供給を多く海外に依存する我国にとっては重大な問題である。このシンポジウムはこのような事情を背景として、天然資源及びエネルギー資源に関する法的、及び、政策的問題を検討し、また、これらの開発の環境への影響をも併せて検討することによって、産業界、政策当局者等にとって参考となる将来の方向を探ることを目的として開催された。
 このシンポジウムは東京大学名誉教授松下満雄とワシントン大学教授トーマス・J.ショーエンバウムによって企画され、これを (一財)貿易研修センター(IIST)がその事業の一環として実施したものである。

2. シンポジウムの内容
 このシンポジウムにおいては、8つのパネルが設けられ、多様なテーマが議論された。1日目(3月2日)の主たるテーマは、「天然資源の輸出規制」であり、 このテーマの下に4つのパネル(パネル1~パネル4)が設けられ、2日目(3日)のテーマは「エネルギー取引と環境」であり、このテーマのもとに4つのパネル(パネル5~パネル8)が設けられた。これらのパネルにおいては多種多様なテーマについて報告が行われ、活発な議論が展開された。

(1) 天然資源の輸出規制
 パネル1は、「主要輸出国の資源に関する法と政策」と題され、松下満雄教授を議長として、資源保有国からの専門家5名が各々自国における天然資源に関する法と政策について現状報告(すなわち、資源採掘や管理に関する法制、鉱業法、事業許認可法制等)について詳細な説明を行った。報告者は以下のとおりである。Andrew D. Mitchell(メルボルン大学ロースクール 教授)、Jingdong Liu (中国社会科学院 教授)、R.V. Anuradha (Clarus法律事務所 パートナー)、Amarsanaa Batbold (モンゴル国立法律事務所 副所長)、Georgy Daneliya (K&L Gates外国法共同事業法律事務所 アソシエイト)。
 パネル2は「輸出規制とWTO協定」であり、トーマス・J.ショーエンバウム教授(Thomas J. Schoenbaum)を議長として、Gabrielle Marceau (世界貿易機関 法律部顧問)がWTO(世界貿易機関)における資源輸出制限に関する国際法規について説明を行い、Dongsheng Zang (ワシントン大学ロースクール 准教授)及び、Julia Ya Qin (ウェイン州立大学ロースクール/清華大学法学院 教授)が中国の立場を含め、コメントを行った。
 パネル3は、「自由貿易協定(FTA)と天然資源」であり、自由貿易協定における天然資源管理、輸出規制の諸問題が取り上げられた。報告者は中川 淳司(東京大学社会科学研究所 教授)であり、コメンテーターは福永 有夏(早稲田大学 社会科学総合学術院 教授)、末冨 純子(ベーカー&マッケンジー法律事務所 弁護士)であった。
 パネル4は、「天然資源の輸出に関する競争法の課題」であるが、天然資源貿易にいては、国家による資源管理に加えて、資源会社の独占、寡占、輸出カルテル等が大きな問題であることに鑑みて、このテーマが取り上げられた。報告者はJean-Francois Bellis (バンバール・アンド・ベリス法律事務所 マネージング・パートナー)であり、鉄鉱石採掘分野における合併案件が取り上げられ、コメンテーターとして、滝川 敏明(関西大学教授)が管轄権問題について、 及び、Marek Martyniszyn(クイーンズ大学ベルファストロースクール 講師)が、輸出カルテル等の問題についてコメントを行った。

(2)エネルギー取引と環境
 パネル5は、「特別協定とエネルギー:エネルギー憲章に関する条約、WTO緑化技術協定 WTO情報技術協定、WTO貿易円滑化協定」と題されており、エネルギー憲章、WTO環境機材に関する協定等に関する報告と議論が行われた。議長はトーマス・J・ショーエンバウム教授であり、報告者はMichael Hahn (ローザンヌ大学 教授)、コメンテーターは淀川 詔子 (前エネルギー憲章事務局法務顧問 西村あさひ法律事務所 弁護士)及び、小林 友彦(小樽商科大学 准教授)であり、エネルギー憲章とWTO協定の間の異同、両者の関係等について議論が行われた。
 パネル6は、「再生可能エネルギー取引における補助金の問題点」であり、松下満雄教授を議長として、報告者はJaemn Lee(ソウル国立大学校法学専門大学院 准教授)、コメンテーターは、Heng Wang(西南政法大学大学院 教授)及び、藤井 康次郎(西村あさひ法律事務所 弁護士)であり、エネルギー貿易においてWTOにおける国家補助規制を緩和すべきか、補助金分野に関係して市場確定をどのようにすべきか等について議論が行われた。
 パネル7は、「エネルギー取引と投資協定」であり、松下満雄教授を議長として、報告者はSusan L. Karamanian (ジョージワシントン大学ロースクール International and Comparative Legal Studies学部長)、コメンテーターは濱本 正太郎(京都大学大学院 教授)及び 、岩田 伸人(青山学院大学 教授)であった。このパネルにおいては、資源関係における2国間投資協定、投資家保護等の問題が取り上げられた。
 パネル8は、「環境問題:気候変動と貿易/投資」であり、トーマス・J・ショーエンバウム教授を議長として、Krista Beth Nadakavukaren Schefer (バーゼル大学 教授)が報告者、村瀬 信也(国際法委員会 「大気の保護プロジェクト」特別報告者)がコメンテーターを務め、気象変動制御に関する種々の方策、その実現性、現状における可能な方策等について議論が展開された。

3. 評価
 このシンポジウムは現代の重要な問題を取り上げている。この問題の範囲はきわめて広汎で、そこからテーマが選択されて取り上げられたが、これらの問題については既に他所でも研究が進められている。しかし、国際法、資源法、経済法、及び、それらの背景にある政策という観点からこれらの問題に取り組んだものは多くはなく、この意味において、産業界、及び、政府の将来方針決定に際して有用な情報を供与できたと考えられる。また、米国、欧州のみならず、豪州、インド、ロシア等から広く研究者を招へいし、これらの各国の専門家と日本の専門家の間で活発な意見交換が行われたことは、大いに意義のあることと思われる。



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