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APECの経済統合を支える人材育成の取組-「海外投資成功のための戦略的人材マネジメント」プロジェクト実施報告【配信日:2015/03/31 No.0241-0968】

配信日:2015年3月31日

APECの経済統合を支える人材育成の取組
-「海外投資成功のための戦略的人材マネジメント」プロジェクト実施報告

(一財)貿易研修センター
人材育成部 プログラムオフィサー(APEC HRDWG CBN担当)
豊嶋 玲子


 貿易研修センターは、APEC地域の持続的経済発展に資するため、海外直接投資に携わる域内のグローバル経営人材を育成するプロジェクトを実施しています。


 アジア太平洋経済協力(APEC)は、アジア太平洋地域の21の国と地域が参加する経済協力の枠組みである。APECは、同地域の持続的成長と繁栄を実現するため、1989年の創立以来、貿易・投資の自由化や経済・技術協力に関する様々な取組や議論を行ってきた。その成果として、APEC地域全体の貿易量は過去25年間で約7倍も増加し、高い経済成長率を実現した。現在、APEC地域は世界で人口の4割、国内総生産(GDP)の6割、貿易量の5割を占める世界の成長エンジンである。

 貿易研修センターは、APEC創設当初より、APEC人材養成作業部会(HRDWG)キャパシティ・ビルディング・ネットワーク(CBN)に、日本の代表機関として参加し、経済の自由化がもたらす新たな課題に対応できる経営人材を育成するため、各種プロジェクトを実施している。APECに参加する国と地域の人口規模やGDPの差は大きく、文化的にも非常に多様である。プロジェクトでは、この多様性を活かして、APECならではの付加価値のある議論を行ってきた。その取組の一環として、当センターは、2014年7月より、「海外投資成功のための戦略的人材マネジメント」プロジェクトを開始した。

 APECの経済成長を促進する海外直接投資(FDI)は、これまで堅調な伸びを示している。2013年の域内投資量は前年比で8%増加(総額7570億ドル)であり、世界のFDIの約半数をAPECが受け入れている。投資機会の拡大に伴い、大企業のみならず、中小企業も域内の様々な地域に拠点を展開する例が増加してきた。また、域内の企業が、域内外の海外投資家と提携するチャンスも広がっている。FDIを成功させるためには、優秀な現地人材を活用することが不可欠である。一方で、多くの企業にとって、文化、社会、言語の違いが障害となり、優秀な現地人材の採用・育成・確保が課題となっている。

 これを踏まえて、本プロジェクトは、海外展開企業及び受入先のパートナー企業がFDIを成功させるために必要な人材管理に関する成功要因を抽出・分析し、人材管理ガイドラインのひな形を作成することを目的としている。プロジェクトでは、APECの6つのエコノミーから選出された8人の専門家が、実際に海外展開を行う企業にインタビュー等を行い、現地法人における人材管理の成功例・失敗例について調査し、ケースを執筆した。その調査の成果を披露し、意見交換を行うため、2015年1月に台北市で、現地の政府・企業関係者を集めてワークショップを開催した。
(//www.cfiec.jp/2015/apec-taipei-workshop2015/)

ワークショップの模様

ワークショップの模様


 ワークショップでは、APECの専門家が、それぞれ執筆したケースの内容に基づき、各企業の現地法人での人材管理の取組を発表した。業種・規模は多様であるが、どの企業も現地職員のモチベーションや定着率を上げるために、報酬、人材育成制度、福利厚生等に工夫を凝らしており、相互に多くを学ぶことができた。反対に、大手企業が独自の人材管理手法を文化の違う投資先の現地法人に導入して課題に直面した事例も紹介された。共通の教訓として、自社の人事管理・育成制度をそのまま現地法人に導入しても有効に機能しない時のため、現地の社会環境に合わせてシステムを調整する必要性が挙げられた。

 議論では、FDIを行う企業は、最初に政治、社会制度、文化、経済を含む投資先の社会背景を理解し、時間をかけて必要とする能力を見極め、育成制度の開発も含めた取り組みも必要であろうとの意見が出された。適切な人材の発掘には、現地コミュニティの支援や、信頼できる現地パートナーの活用などが提案された。企業がFDIを準備するにあたり、通常、市場調査や戦略、資金繰りなどの分析はするが、併せて現地でどのような人材を採用・育成し、確保するか、そのための留意点を知っておくことが重要であると強調された。また、これまで企業の海外展開の目的は、主に安い労働力の確保であったが、現在は、海外展開を企業の持続的成長のチャンスと捉え、投資先に根を張って事業を行うために優秀な現地の人材を求めている企業が増えている。投資受入先の政府は、その要望に答えるため、既存の職業教育・訓練センターなどを有効活用し、産業界が必要とするスキルを備えた人材の育成を産業界と共同で作り上げて行くことが有効であるとした。

 FDIに携わる企業も、現地職員を単なる労働力とみなすのではなく、企業の成長を支える大切な一員として尊重し、企業と現地職員が企業理念をしっかりと共有することが重要であると、意見が一致した。優秀な現地人材を確保するためには、能力に見合った報酬、福利厚生やキャリア・パスを提示する必要性があるが、単に待遇を良くするのではなく、「この企業で働くと、こんな技術が身に付く」、「ここでしかできない経験ができる」といった、他の企業では代替できない付加価値を示すことも重要であるとの意見もあった。

APEC専門家との記念撮影(台北)

APEC専門家との記念撮影(台北)

 ワークショップの最後では、人材管理ガイドラインの案が発表され、どのような項目がFDIに携わる企業にとって有益か、意見を交換した。ワークショップでの議論をもとに最終化された人材管理ガイドラインのひな形は、プロジェクトで開発したケースと併せて、報告書として4月に出版され、APECのウェブサイト等を通じて公表される予定である。本プロジェクトの成果が、APECで活用されることにより、域内の円滑な貿易・投資促進の一助となることを期待したい。

関連ページ
APEC海外投資成功のための戦略的人材マネジメントプロジェクト ワークショップ(台北)


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