| トップページ |この記事のカテゴリー: 地域・産業 |
IIST e-Magazineのバックナンバー:| カテゴリー検索 | キーワード検索 | 記事一覧 |
2010年度以前 (IIST ワールドフォーラムメールマガジン) のバックナンバー:| キーワード検索 | 記事一覧 |

  • このエントリーをはてなブックマークに追加


IIST e-Magazine (本記事の英語版はこちら)

新シリーズ 日本の力 ―進化する製造業 IIST取材記事 (東京都 墨田区編1) クールで熱いものづくりで世界へ ― 吉田テクノワークス(株)【配信日:2015/01/30 No.0238-239-0957】

配信日:2015年01月30日

新シリーズ 日本の力 ―進化する製造業 IIST取材記事
(東京都 墨田区編1) クールで熱いものづくりで世界へ
― 吉田テクノワークス(株)


 東京都墨田区は水利を活かした様々な地場産業が発達し、日本の近代産業の先駆けを担ってきた歴史があり、現在でも日本経済を支える中小企業が数多く存在する地域です。今回から数回にわたり、この墨田区の中小企業を取り上げながら時代に応じて変化する日本のものづくりについてご紹介してまいります。初回は日本の携帯電話市場を支え続け、単なる下請け企業からの脱却を図る世界のプラスチック加工のパイオニア、リーディングカンパニーであり続ける、吉田テクノワークス(株)をご紹介します。


吉田テクノワークス(株) 吉田重雄社長 「ウチは今、不元気カンパニー時代」笑顔でこう言ってはばからない吉田重雄社長は、しかし、新たな時代のものづくりへとまい進している。吉田テクノワークス(株)の原点は、1946年に墨田区にあった資生堂のコンパクトケース成型工場からはじまり、プラスチック加工技術「インモールド成形」を使った化粧品外装でシャネル他の世界シェアを獲得し、「コンパクトの吉田」と世界的にも認知される吉田製作所である。同社は独自開発したインモールド成形技術を武器に、電気製品、リモコン、ウォークマンなど時代を映す最先端のものづくりを支え、経営規模を拡大していく。そして、2004年、グループ化に伴う分社で、携帯電話プロダクトをメインターゲットとする吉田社長率いる吉田テクノワークス(株)が誕生する。
 吉田テクノワークスは、時代のニーズと共に爆発的に拡大する日本の携帯電話市場を受け、墨田区本社の他、栃木県足利市と岩手県大船渡市に工場を持ち、開発・設計・ 製造を一貫して行う事で、年間80億円の売上げを誇るまでに成長する。また、その独自技術は世界初のカメラ付携帯の誕生に貢献するなど、その高い技術は各方面から評価され、様々な賞を受賞する。特筆すべきは、吉田社長が04年に社長に就任後、まず取り掛かった人事評価制度である。中小企業にありがちな偏った人事評価を払拭し、透明性の高い制度で正しく評価され、社員のモチベーションが上がる職場。この人材育成制度は2006年度の東京都中小企業ものづくり人材育成大賞を受賞し、技術の伝承と新しい技術開発の土壌を整備し、有益な人材育成へと繋がっている。そして、この時期こそが「元気カンパニー時代」だと吉田社長は振り返る。
 しかし、数年後に経営は一変する。2011年3月、東日本大震災で岩手大船渡工場が壊滅。それでも奇跡的な人災被害ゼロの経験をばねに、社員一丸となって翌2012年7月には大船渡工場を復旧させる。が、いざ稼働となった時、メインマーケットである携帯電話市場の日本メーカーのシェアが2%程度と見る影もなく衰退していた。現在の売上は、携帯電話最盛期の2009年の売上の1/3の程度に落ち込み、冒頭の発言である「不元気カンパニー」の状態という。
 ただ、携帯電話市場は世界的にみるとアジア太平洋地域の販売台数が2009年の4倍を超える伸びを示しており、縮小する日本企業に替わってシェアを伸ばすApple社や中国・韓国・台湾系の企業に向け、自社の独自技術を売り込みたいと意欲的だ。また、2013年にはガラス繊維が含まれたスマートフォン向けの世界初のインモールド成形技術の開発など、最先端の技術開発で日本の携帯電話市場を支え続けている。
 また、吉田社長は携帯電話市場以外で今後発展が見込める医療分野、自動車部品分野での来るべき時に向けた商品開発、技術開発にも積極的だ。自動車関連では独自技術でのインパネ部品のシェアを狙う。自動車のインパネ製造は日本企業が6割を占めており、今後が望める分野だ。ただ、自動車関連産業は、受注後、数年後から量産となり、利益が出るのも数年後というタイムラグがある。一方、医療関係では、情報化時代のニーズに合わせたICチップ用のインモールド技術開発他での特許等、様々な分野での開発に力を入れるが、医療分野への新規参入の壁は高いという。そして、現在の円安による原材料輸入のコスト高、原油安で相殺されてはいるものの、大手メーカーからの受注にたよる中小企業にとっては厳しい経営状態が続いている。
 高い技術力を武器とするメーカーとして、国内生産にこだわり、コスト競争には加わらず、独自のものづくりにこだわりたい。が、そこには大手メーカーからの注文に頼る中小企業のジレンマも伺える。経営難を打破するため、単なる下請けからの脱却を目指したい吉田社長がとった戦略、それは高い技術を製品に活かし、直接エンドユーザーに製品を届けるとの思いで、若手社員たちと立ち上げたiPhoneのカバーケースを製造する自社ブランドだった。社員と奮闘するものの、市場開拓の難しさを痛感し、苦い経験を積んだ。しかし、今、それを糧とした新しいビジネスが順調に始動している。
 「墨田区産業経済課のご支援にはとても感謝しています。墨田区に貢献していきたい」吉田社長の言葉には、墨田区産業経済課との強い信頼関係を感じる。墨田区は、中小企業支援の一つとして、高い技術力を持ったものづくり企業と、著名クリエイターをマッチングして自社ブランド商品を開発する支援策を実施している。この支援がh concept(アッシュコンセプト)代表取締役 名児耶秀美氏との出会いを生み、吉田テクノワークスのプロダクトを発信するブランド「ornament」(オーナメント)が誕生した。そして、2013年秋、その第1弾として独自技術を駆使したクールな印象のカードケースを発売し、名児耶氏のファミリー企業として、国際見本市に出展することで、大きな一歩を踏み出したのである。国内をはじめ、海外では、MoMA*(米)、コレット(仏)、プランタン(仏)、ポールスミス(英)等の名だたるショップでの販売を受け、年間1100万円を売り上げた。この事でヒット商品として認められ、雑誌などでも度々取り上げられるようになった。これまでの下請けの部品製造での経常利益は3%程度だが、この「ornament」での製品販売は5~10倍の経常利益を上げる。今後、これに続く第2、第3弾のアイテムで海外展開を図り、1億円の売上を目指すという。

吉田テクノロジーの最新技術が随所に活かされたクールなカードケース

吉田テクノロジーの最新技術が随所に活かされたクールなカードケース

 日本の経済成長と共に続いてきた大量生産時代は終焉し、新たなものづくりの時代が到来している。グローバル経済の下、中小企業には高い技術力と共に、発信力、コミュニケーション、デザイン力等のソフト面での強化が求められている。その中小企業の弱点を墨田区や著名なクリエイターとの連携で強みに変え、日本発の新しいものづくりへと舵を切った吉田テクノワークス。自社の原点であるインモールド工法を発展させながら、未来に向けた元気カンパニーの挑戦が、日本のものづくりの力へと繋がっていく。(荒井幸子)

吉田テクノワークス(株): https://www.yoshida-tw.co.jp/index.html
ornament: https://www.h-concept.jp/design/ornament/

*MoMA:ニューヨーク近代美術館
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
(本記事の英語版はこちら)


| トップページ |この記事のカテゴリー: 地域・産業 |
IIST e-Magazineのバックナンバー:| カテゴリー検索 | キーワード検索 | 記事一覧 |
2010年度以前 (IIST ワールドフォーラムメールマガジン) のバックナンバー:| キーワード検索 | 記事一覧 |