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第8回CLMV有望指導者招聘事業に参加して | ベトナム商工省 多国間貿易政策局WTO部 次長 トラン バ クオング【配信日:2014/11/30 No.0237-0954】

配信日:2014年11月30日

第8回CLMV有望指導者招聘事業に参加して

ベトナム商工省 多国間貿易政策局WTO部 次長
トラン バ クオング


 一般財団法人貿易研修センター(IIST)は、日本の人材育成の経験を紹介する目的でカンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム(CLMV諸国)から参加者を招聘し「第8回CLMV招聘事業」を実施した。このプログラムでは日本政府と民間企業それぞれがどのようにして人材を育成し、競争力強化に繋げてきたのかが紹介された。CLMV側の参加者は、自国の人材育成支援策や教育・職業訓練制度等に関する情報を提供した。プログラムに実際に参加し、自分自身で感じ、学んだ点を以下に紹介したい。


1. 経済産業省による人材育成施策・政策
 経済産業省(産業人材育成室)によるブリーフィングでは、人材育成政策やインターンシッププログラムの推進施策等が紹介された。このプログラムは経済産業省と文部科学省が協力し、大学と企業間との連携を促進するなど、学生たちにより実践的な教育の機会を提供・強化する目的で実施されている。経済産業省はこの事業の大枠作りに携わり、産業界からの本事業への参加を促すための調査や研究、インターンシップの機会についての情報提供のほか、本事業への関心を喚起する活動を行っている。

 このインターンシッププログラムは、非常に包括的かつ実務的である。学生達にとっては実際のビジネス現場において技術や知識を試すいい機会となる一方、企業にとっては卒業を控えた優秀な学生を採用できるよい機会となっている。この制度は、CLMV諸国が日本から学ぶべき優れた点だと思う。

2. (一財)海外産業人材育成協会(HIDA)訪問と(株)ニッセイ基礎研究所主席研究員アジア部長平賀富一氏による講義

 一般財団法人海外産業人材育成協会(HIDA)は、財団法人海外技術者研修協会(AOTS) と財団法人海外貿易開発協会(JODC)が2012年3月30日に合併してできた団体で、開発途上国の人々に貢献し、共に成長していくことを使命として活動している。

 我々は、実際にHIDAの研修施設などを見学したほか、プレゼンテーションを通じて、同機関がCLMV諸国の人材育成に積極的に貢献していくことを理解した。また、HIDAが産業界に対して、技術や経営研修等といった幅広い訓練を行っていることはよく知られている。海外の日系企業は事業の現地化を進める上で、多くのコアとなる人材を現地で採用し、役員もしくは企画、デザイン、開発部門の管理職として育て上げるため訓練しているが、HIDAの受入れ事業や専門家派遣事業はこうした現地化のための人材育成に役立っている。

 また、HIDAと平賀富一講師の講義を通じて、経済産業省が実施しているグローバルなインターンシップ(国際競争即戦力インターンシップ)について学んだ。このプログラムは、日本と受け入れ先の国(CLMV諸国を含む)とのビジネス促進、経済関係強化のための懸け橋となる人材を育成することを目的としている。そのために、将来有望な日本の若手が発展途上国の政府や政府機関、地場企業、日系企業に派遣されインターンとして業務を行う。CLMV諸国では政府の予算が限られているため同様のプログラムを実施することは難しいが、より限定的な規模で選らばれた官僚が先進国からの奨学金等により海外でインターンシップを体験するというプログラムを実現できたら良いと思う。そうすれば、我々の政府も優れた人材を確保し、育成できると考える。

3. 中小企業の人材育成戦略
 日本の中小企業の人材育成は大変有益で、学ぶべきことが多い。人材育成プログラムは費用面の負担が大きいにもかかわらず、多くの日本の中小企業は自社、投資先国およびその人々のため、人材育成プログラムを継続的に実施している。

 訪問した(株)南武や日光金属㈱といった中小企業から素晴らしい人材育成戦略を学ぶことができた。これらの企業は、東南アジアで事業展開をし、現地で採用した人材を訓練している。訓練プログラムでは、管理職やワーカーを現地で研修するだけでなく、技術向上のため日本に派遣するといった取り組みも行っている。こうした人材育成プログラムは費用がかかり初期投資額を増大させるにもかかわらず、企業は現地人材の能力向上のための投資を惜しまない。時には、現地の人材が義務を果たさず、研修終了後、退職してしまうというリスクもある。このような人材育成戦略ゆえに、企業は海外において長期に事業を展開する上で必要不可欠な優れた人材を確実に育てることができるのだ。訪問を通じて学んだのは、長期にわたる人材分野への投資は非常に大きな成果を産み出すということだ。

4. オンザジョブ・トレーニング(OJT)とその他の人材育成プログラム
 訪問した多くの企業、㈱南武、日光金属㈱、(株)ファミマリーマート、(株)マニー、そして(株)東芝でもOJTを人材育成の手法として活用していた。新たに人材を雇用すると、企業は基礎訓練のほか、先輩職員によるきめ細かい指導を新規採用者に対して行う。そのため、新入社員は実務経験を通じて学びつつ、上司やメンターの助言や評価を受けながら成長することができる。このようにして各自は技術力を高め、訓練プログラムを通していろいろ学ぶことができる。

 東芝のような大企業では、長年にわたり企業が行ってきたOJTとより近代的な研修方法、すなわちグローバルトレーニング、職務レベルに応じた訓練、職務内容に関連した研修やリーダーシップ研修などを組み合わせて人材育成を行っている。また東芝には東芝総合人材開発(株)という研修センターもある。東芝は、グローバルに活躍できる人材を育てるというポリシーの元、日本のグローバル人材を育てる目的で、グローバル人材基礎コースや若手幹部育成研修などを実施している。さらに、東芝は海外出向を控えた日本人職員の渡航準備を手助けするため、海外渡航前研修、グローバルな交渉力の訓練や家族へのサポート研修等も行っている。

 東芝はまたCLMV諸国でも優れた採用方針をとっている。例えば、ベトナムではハノイ工科大学(日本語によるITスキルや日本語教育を実践)とベトナム国家大学(2007年に東芝-コルテック ソフトウェア技術研究所を設立)という2つの最難関大学から学生を採用するほかインターンシップ協力を行っている。

5. 日本式・西洋式人材育成のコントラスト
 日本郵船(株)の訪問を通じて、我々は日本と西洋の人材育成戦略の違いについて理解することができた。日本の人材育成戦略は年功序列型終身雇用に基づいた制度であるのに対して、西洋では成果主義に基づく報酬制度を基本にしている。日本では勤続年数を重視し全ての従業員に同様の機会を与え、多くの従業員は定年まで働く。日本企業では従業員を評価する上で「忠誠心」を最も重要な要素の1つとみなし、またチームワークを重視している。日本企業は雇用面では新卒者を採用する傾向がある。

 一方、西洋式の人材育成戦略では各自の特定の地位や仕事内容に求められる成果に対して給料が支払われる。企業は、採用を希望する人材がその地位に求められる技術や十分な経験、資格を持つ場合にのみ採用する。また、西洋の企業はチームワークより個々のパフォーマンスを重視する。

 グローバルな物流手段を提供する日本郵船は日本と西洋式の両方の方式を取り入れる必要があることに気が付いた。本部のある日本では日本式の人材育成戦略を、海外子会社では西洋式人材育成戦略を採用している。これにより、日本では伝統的な戦略を維持しつつ、海外展開においては柔軟な人材育成戦略をおこなっている。

結論
 多くの日本企業は、CLMV諸国において信頼できる企業家としてみられている。日本企業がCLMV諸国において投資額ナンバーワンの位置を占めている場合もある。また、日本企業の「人を大事にする」という人材開発戦略はよく知られている。日本のベトナムへの投資の好例としてトヨタ、ヤマハ、日立、ファミリーマート、東芝、マニー、日本郵船、イオン、キャノン、デンソーなどをあげることができる。

 日本とCLMV諸国は似たような価値観や文化をもっており、日本の人材育成戦略はCLMV諸国に受け入れやすく、適切なモデルであると思う。CLMV諸国も年長者や経験に敬意を払い、従業員の態度を重視している。学位などの資格も大切だが、私達もまた年長者を敬い、素直で、一生懸命働こうという従業員を歓迎する。家族的な企業文化(チームワーク)や仕事を通じ成長し続ける従業員を尊敬し大事にしている。OJTは日本企業から学ぶのにとてもいいモデルであり、我々の国がこれから作成していく人材育成プログラムで重要な戦略の1つとして位置づけられるだろう。

 このCLMV招聘事業を通じて、多くの成功している優れた企業を訪問することができた。我々、CLMV諸国からの12名の政府関係者はこうした企業関係者と非常に意義深い意見交換を行い、自国の経済発展のために必要な人材開発について様々なヒントを得ることができた。アジアで成功している日本企業との意見交換において、日本企業が現地人材に何を期待し、また現地人材育成にどのように貢献しようとしているかを学ぶことができた。こうした議論は、参加者がCLMV諸国に日本からの投資をより一層呼び込むため、日本の投資家が期待する人材を育成するためにどのような人材育成政策をとるべきか再考するいい契機になったと考える。

 最後に、IIST、HIDA、METIそして我々に貴重な人材育成関連の知識を授けてくれた訪問先企業の皆様にお礼を申し上げたい。このプログラムから多くを学んだ。とりわけ中小企業の訪問から非常に多くのことを学ぶことができた。本プログラムは大変実り多く、役に立っただけでなく楽しかった。将来また別のテーマで、本事業に関われることができたら嬉しい。

(原文英語)


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