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APEC事業におけるグローバル経営人材育成の取組 | (一財)貿易研修センター 人材育成部 プログラムオフィサー(APEC HRDWG CBN担当) 豊嶋 玲子【配信日:2012/12/27 No.0214-0875】

配信日:2012年12月27日

APEC事業におけるグローバル経営人材育成の取組

(一財)貿易研修センター 人材育成部
プログラムオフィサー(APEC HRDWG CBN担当)
豊嶋 玲子


 IISTは、APEC設立当初より、経済のグローバル化の課題に対応し、域内の持続的経済発展を支える経営人材の育成に貢献しています。


 アジア太平洋地域の21の国と地域(エコノミー)が参加するアジア太平洋経済協力(APEC)は、世界の約50%のGDP、人口、貿易額を占める世界の成長エンジンとして、グローバル経済に大きな影響を与えている。APECの目的は、域内の自由で開かれた貿易・投資を確立し、APEC地域全体の成長と繁栄を達成することである。これまでのAPECの取組により、着実に貿易・投資の自由化が進展し、域内の企業がグローバル市場でビジネスチャンスを掴む多くの可能性が生まれた。

 同時に、域内の経済自由化の促進は、新たな課題と脅威を明らかにした。ボーダーレスな経済活動は、ひとつの国や地域の経済状況が域内全体に影響を与える一方で、市場競争は激しさを増し、地域間で不均衡と格差が生じている。また、持続的な成長を実現するために、環境・エネルギー問題などの諸課題に対応する必要がある。域内の企業が、自由化の好機を活用し、成長を遂げるには、これら新たな課題を克服することが求められている。

APEC HRDWG会合

APEC HRDWG会合

 貿易研修センターは、APEC創設当初より、APEC人材養成作業部会(HRDWG)キャパシティ・ビルディング・ネットワーク(CBN)の日本代表機関として、域内の人材育成機関と連携し、APECのグローバル経営人材を育成する各種プロジェクトを実施してきた。例えば、グローバル・サプライチェーンにおいて企業に求められる配慮などの諸課題について検討した「サプライチェーンにおける企業の社会的責任(CSR)」や、投資自由化に伴う人材育成の課題を取り上げた「投資自由化・円滑化のためのキャパシティ・ビルディング」など、自由化の新たな課題に取り組むプロジェクトを実施し高い評価を得てきた。

 その一例として、企業の持つ知的資産への理解を深め、これを戦略的に活用できる経営者の育成を目的としたプロジェクト「新興企業の知的資産経営戦略」では、従業員が保有する豊かな知識や経験は、企業の成長を促進する重要な知的資産であり、そのような人材を育成し、確保する制度の強化が、企業の知的資産価値の向上に必要であると指摘された。

 大企業では、人材管理制度を強化する様々な取組により、優秀な人材の確保・育成に力を入れている。一方、経済的・人的なリソースの問題から、独自で有効な人材管理制度を確立している中小企業は少ない。APEC域内の企業は、約90%が中小企業であり、雇用全体の約60%を支えている。APECの更なる経済成長を実現するには、これら中小企業の持続的な発展が必要不可欠である。内外の中小企業サプライヤーとの関係が強まるなか、大企業にとっても中小企業の人材管理能力の強化は、グローバル市場でのビジネスリスクを軽減する上で非常に重要である。

 これを踏まえて、当センターは、平成23年12月から1年間に渡り、「APEC 貿易投資促進のための中小企業人材管理制度強化プロジェクト」を実施した。グローバル市場で競争力を保持するために、優れた人材を企業の知的財産として積極的に活用する人材育成制度を確立できるよう、域内の中小企業のオーナーやマネージャーの意識・能力を高めることを目的としている。

 プロジェクトでは、域内の中小企業が、優秀な人材を採用、育成、確保する上で抱えている課題や、各エコノミーにとっての有効な人材管理制度の共通項や違いを明確にするとともに、APECの専門家により、人材管理制度に関する10のケース教材を開発した(https://publications.apec.org/publication-detail.php?pub_id=1361)。ケースでは、8つのエコノミーから、IT産業、サービス産業や伝統産業など様々な分野を取り上げ、実際に存在する企業が抱えるグローバル化と人材管理の課題等を紹介した。そして実際にケース教材を利用して、韓国・ソウルにおいて、地元の中小企業のオーナーや政府関係者を集めて、プログラムを構築するためのパイロット・セミナーを実施した(https://www.cfiec.jp/2012/apec-seoul-pilot-seminar/)。

韓国パイロット・セミナーの参加者と

韓国パイロット・セミナーの参加者と

 セミナーでは、企業が人材管理制度を確立するプロセスとして、(1)好機と課題を見極めること、(2)人材の活用方法を見直して競争力を高めること、(3)グローバル市場で生き残るためにイノベーションを起こしていくこと、(4)競争力のさらなる促進に必要な組織文化を構築し、企業内に浸透させていくこと、をサイクルとするフレームワークが提示された。参加者は、フレームワークに沿って、各ケースが提示する様々な人材管理に関する課題について議論した。

 セミナーの成果として、人材管理に関する多くの留意点が指摘された。企業の人材管理方法は、ビジネス戦略と緊密に連携してこそ、その効果を発揮するものであり、経営者は明確なビジョンを確立し、組織に浸透させるリーダーシップを発揮することが求められる。そして企業の成長と併せて、経営者の個人的な判断による評価や訓練から、より客観的な人材管理システムを導入することが必要である。そのために、政府機関やNGOなどの外部のリソースや、中小企業同士のネットワークを活用することも有効である。

 本プロジェクトは、教材や研修プログラムを共同で開発・実施し、APECの特徴であるクロスカルチャーの体験や、多様な視点を共有するものである。国や地域の価値観・習慣の違いや文化を理解し、その良さを最大限に活用する能力は、グローバル人材の重要な資質である。日本の企業も、このようなプロジェクトに参加することでグローバルな視野を持つ人材を開発することが可能であろう。今後も、APECのプロジェクトが、国内外において、企業の成長の原動力となる人材の育成に役立っていくことを期待する。


関連ページ
APEC人材育成作業部会


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