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連載 メコン圏と日本 No.4 – ベトナム1 ベトナム経済の現状と日本の経済協力 | 一般財団法人ASEAN・東アジアビジネス支援機構 専務理事 星野 達哉【配信日:2012/07/31 No.0209-0852】

配信日:2012年7月31日

連載 メコン圏と日本 No.4 - ベトナム1
ベトナム経済の現状と日本の経済協力

一般財団法人ASEAN・東アジアビジネス支援機構
専務理事
星野 達哉


 経済基礎要件は改善傾向にある。日本からの投資数は前年の約80%増。しかし、賃上げ等でカンボジア、ミャンマー、中部ジャワも注目されている。  毎年の外国投資実行約 110億ドル、ODAの約80億ドル、越僑の送金約60億ドルが経済を支え、日本ODAは大きく寄与。


(1) ベトナム経済の現状
1.
ベトナムは7%前後の高度成長が続いたが、2008年後半の証券・不動産バブルの崩壊、リーマンショック に始まる世界同時不況の影響を受け、その対策として大型景気振興政策を実施 (約75億ドル・政府歳入の25%強)、国のシンボルであるGDP成長率の大幅下落を防いだ。2009年成長率が大きく下落しなかったのは、ASEAN主要国ではインドネシアとベトナムであるが、ベトナムではこの過大な振興策の為、財政赤字が悪化した。又、通貨ドンの対ドル続落も止まらず(10年で30%下落)、物価上昇率はASEANで突出し、貿易赤字、電力不足含め、経済基礎要件が悪化した。2010年はやや改善したが、本格的な回復は2013年以降と推測される。

2. GDP成長率は2009年5.3%、2010年6.5%、2011年は5.9%、2012年5.6%(IMF予想)と低迷しているが、2013年は6%台回復と思われる。
 2011年財政赤字は 40億ドルで改善傾向にあり(歳入約320億ドル・歳出約360億ドル) GDP比財政赤字は4.9%で、目標値の5.3%をクリアーしている。
 問題のCPI(消費者物価指数) は2011年通年平均・前年比18.58%増で、 ASEANの中で最も高く、CPI抑制が最重要の政策課題である。昨年の政府の緊縮政策が功を奏し、2012年6月現在で、前月比の上昇が止まっている。一方、この緊縮政策の為、景気が停滞し、今年1月~5月で倒産件数は約22千社(年間で50千社予想)と増加しており、最近は一部緩和政策がとられ始めている。
 貿易赤字は2010年より30億ドル改善している。 外国投資は2011年149億ドル(1,465件)で2010年186億ドル(1,238件)より減少したが件数は過去最大。
 日本からの投資・企業進出も案件数は過去最高の208件(前年の約80%増)となり、積極的進出を図る韓国(270件)に次ぐ。中小案件が増えているが、ベトナムを或る機種の生産基地とするなど、色々な分野でベトナム進出は続いている。中大型事業の進出もあり、例えば、京セラのプリンター・低価格複合機の新工場建設、パナソニックの冷蔵庫・洗濯機の新工場建設、ホンダの二輪車工場増設(年産200万台から最終的に300万台に)、YKKが衣料品用ファスナー新工場建設、日鉄住金・伊藤忠丸紅鉄鋼でカラー鋼板生産、太平洋セメントの生コン工場新設、ブリヂストンが乗用車用のラジアルタイヤ工場建設、信越化学がレアアース加工拠点新設、ニプロが後発医薬品の工場建設、佐川急便がベトナムで宅配事業、タカラトミーの中国・タイに次ぐベトナム生産基地を等々---。
 中国での繊維縫製事業が、大幅な労賃の値上がりや投資環境の変化で将来的に不安になったので、ベトナムにシフトすることを検討する日系企業が増えている。この場合、中国の工場を維持しつつ生産基地を他のASEAN国に分散する企業が多い。

3. 一方安い労働力を求めてベトナムに進出する外資で、最近ベトナムでも賃上げが激しく(上げ率はASEANで最大)、及び再発するストライキで、ベトナム以外のカンボジア、ミャンマーに目を向けている企業もある。インドネシアの中部ジャワでは、労賃が約80ドル/月と安く、韓国縫製業者は、ベトナムから中部ジャワに進出をシフトしている。

(2) 外国資金の流入
 ベトナム経済を支えているのは、毎年入ってくる外国直接投資の実行額約 110億ドル、ODAの約80億ドル、越僑からの送金約60億ドルの合計 250億ドルである。GDP1,046億ドル(2010年GSO統計)の約25%にあたる。この資金流入がベトナム経済を支え、企業や産業の発展、インフラ整備、事業・開発投資、国内消費などに投入されている。

(3) 日本の経済協力
1.
日本からの主なODA(2009年)供与国はベトナム12億ドル、インド5億ドル、トルコ2億ドルで、ASEAN関係ではカンボジア1.3億ドル、ラオス 0.9億ドル、マレーシア0.9億ドル、ミャンマー0.5億ドルである。ベトナムへのODAが群を抜いて多い。
ベトナム政府は『低所得国からの脱却(2010年) 』と『工業化(2020年)の達成』を目標とし、外資も含む民間投資主導で経済成長を持続することを軸とし、その為には基礎的インフラ・各種経済制度の整備や環境・所得格差への配慮が重要としている。

2. 日本のODAは、上記ベトナム政府の国家開発方針に沿って実施している。ODA支援の重点は下記分野である。
(i)経済成長促進・国際競争力強化の支援:ビジネス環境の整備、裾野産業育成など民間セクター開発支援、電力供給能力強化、都市開発・運輸交通・通信ネットワークの整備など。
(ii)社会・生活面の向上と格差是正の支援:保険医療関連、農民の生活向上など。
(iii)環境保全の支援:上下水道の整備、廃棄物の管理、大気汚染対策など。
(iv)ガバナンス強化の支援:汚職対策、行政改革、法整備、司法改革など。

3. 日本はベトナムへの最大のドナー国であり、ODAを通して、確実にベトナム経済の成長に寄与している。具体的ODAの最近の例では、ホアラック科学技術都市振興計画(第一期) 152億円、ノイバイ国際空港第二ターミナル建設 205億円、ホーチミン都市鉄道建設(第二期) 443億円、南部ビンズオン水環境改善 200億円、地方病院医療開発(第二期) 87億円、ラックフエン国際港(港湾・道路・橋梁)建設(官民partnership案件) 210億円である。また無償案件として、中部地方橋梁改修、ハノイ市交通管制システム整備、税関の通関電子化等、人材育成奨学案件等々がある。

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