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連載 メコン圏と日本 No.2 – ラオス2 ラオスへの経済協力 | ラオス計画投資省 上級顧問(JICA専門家) 鈴木 基義【配信日:2012/05/31 No.0207-0844】

配信日:2012年5月31日

連載 メコン圏と日本 No.2 - ラオス2
ラオスへの経済協力

ラオス計画投資省
上級顧問(JICA専門家)
鈴木 基義


 第4回日本・メコン地域諸国首脳会議が東京で開催され、日本からメコン地域諸国に総額2兆3千億円にのぼるインフラ事業リストが提示された。ラオスの発展に相互に連関する効果が高いと期待されている。


 ベルリンの壁が崩壊した翌年の1990年に、在ラオス日本国大使館に奉職した私は、1991年にヴィエンチャンでソビエト連邦の崩壊に遭遇した。ソビエト連邦のペレストロイカは、ソビエト型社会主義崩壊の前兆となり、1988年以降の対ラオスへのソビエト連邦の経済・軍事援助が急減するかたちで具現化された。ソビエトのラオスへの援助は、こうして1991年に消滅した。ソビエトに代わり対ラオスの援助の主役は国際機関と西側諸国であったが、なかでも日本の援助は1991年から今日に至るまでトップドナーとしてラオスの開発を支援してきた。支出純額ベースで見ると、2009年に日本の対ラオスODAは9236万ドルで第1位である。第2位のオーストラリアが2961万ドル、第3位のドイツが2736万ドル、韓国が2514万ドルと続く。中国のODA統計は公表されていないので、国際比較がしにくいが、目抜き通りに中国文化会館を建造するなどそのプレゼンスは強い。
 日本政府は、対ラオス・国別援助方針を本年4月に改定した。ラオスは、第7次社会経済開発計画の中で8%という高い経済成長率を目標とする一方、貧困削減に努力し、2020年にはLLDCから脱却することを目指している。日本は、ラオスの開発目標達成を支援し、ASEAN が進める統合、連結性の強化、域内の格差是正を図っていく観点から、「経済・社会インフラ整備」、「農業の発展と森林の保全」、「教育環境の整備と人材育成」及び「保健医療サービスの改善」の4 つを重点分野と定め、環境にも配慮した経済成長の促進に一層の重点を置いた援助を展開している。これらの重点分野について簡潔に解説してみよう。
 第1の重点分野である経済・社会インフラ分野では、持続可能な経済成長を実現するため、ASEAN 連結性強化に資するインフラ(道路、橋梁、空港など)整備、本邦企業のラオス進出を促す投資・貿易環境(物流センターなど)整備、安全かつ安定的な電力供給の拡大による国内の電力へのアクセス格差是正と電力輸出に向けた支援を行う。またバランスのとれた経済発展を実現するため環境と調和した快適な社会構築に資する支援(環境管理、浄水場、都市計画など)を行う。
 第2の重点分野である農業の発展と森林の保全分野では、ラオスの主要産業である農業セクターの振興及び貧困層の大半を占める農民の所得向上により、ラオス経済の安定的成長や、経済成長に伴う都市と地方の格差是正を図るため、灌漑農業などによる生産性向上や商品作物栽培促進のための支援を行う。また森林保全及び貧困削減のため、森林資源の持続的活用と生計向上のための支援を行う。
 第3の重点分野である教育環境の整備と人材育成分野では、社会経済開発の鍵となる人材を育成するため、教育環境の整備、教員の質と学校運営の改善を支援する。初等及び中等教育では、我が国が多くの国で支援の実績を有する理数科教育分野を中心に支援を行う。また民間経済セクターの強化促進のための高等教育・技術職業教育への支援を行う。
 第4の重点分野である保健医療サービスの改善では、保健分野におけるミレニアム開発目標(MDGs) の達成のため、母子保健分野を中心に、医療人材育成に対する支援を行う。
ソムサワート副首相

ソムサワート副首相

 ラオスに対する日本の援助は、要人の訪日からも伺える。本年3月にはトンシン首相が日本政府の招待で訪日したが、4月15~19日にはソムサワート副首相が訪日し、川崎で開催されたラオス投資セミナーに参加した。これに続き、4月20日から日本・メコン地域諸国首脳会議に出席するためトンシン首相が再び訪日した。
 4月20日には、来日中のトンシン・ラオス首相が、JICA田中理事長と会談し、橋や発電所、空港の整備のほか、JICAが策定したヴィエンチャン都市開発マスタープランの具現化などに対する協力に期待を示した。さらにトンシン首相は、JICAが無償資金協力で実施したワッタイ空港の拡張により、本年11月に予定されるアジア欧州会合において、各国首脳が利用する大型機が駐機できるようになることに謝意を表明した。
 翌日の4月21日には迎賓館において、第4回日本・メコン地域諸国首脳会議が開催された。野田総理が議長をつとめたこの会議には、フン・セン・カンボジア首相、トンシン・ラオス首相、テイン・セイン・ミャンマー大統領、インラック・タイ首相、ズン・ベトナム首相が出席した。この首脳会議において、日メコン協力のための「東京戦略2012」が採択され、2015年のASEAN共同体構築やミレニアム開発目標達成を後押しし、
協力協定調印

協力協定調印

また日本とメコン地域の共通の課題である自然災害に強い社会を作るため、野田総理が以下の3つの協力の柱を提案した。第一の柱は、域内の連結性の支援を行う「メコン連結性を強化」すること、第二の柱は、メコン地域の経済成長のための投資や貿易を促進する「共に発展」すること、そして第三の柱は自然災害、母子保健対策等を行い、「人間の安全保障及び環境の持続可能性を確保」すること。これを支援する具体的なプロジェクトとして、日本政府からメコン地域諸国に事業総額約2兆3千億円と見積もられる57件にのぼるインフラ案件リストが提示された。インフラや基礎生活分野などの社会基礎整備に引き続き重要な役割を果たすODAについて、日本より、来年度以降3年間で円借款、無償協力資金、技術協力を活用し、約6,000億円の支援を実施することが表明された。ラオスの発展は、独善的に国内開発していくよりも、メコン流域諸国と協同で取り組み、有機的に結合してこそ、最大の効果が得られるであろう。

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