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『日本外交の課題とアジア』、『独立20年を迎えた中央アジアの政治・経済情勢と課題』、『中国の東アジア経済協力と日本』 ~平成23年度IIST各研究会 公開シンポジウム報告~ | 一般財団法人 貿易研修センター【配信日:2012/04/27 No.0206-0841】

配信日:2012年4月27日

『日本外交の課題とアジア』、『独立20年を迎えた中央アジアの政治・経済情勢と課題』、『中国の東アジア経済協力と日本』
~平成23年度IIST各研究会 公開シンポジウム報告~

一般財団法人 貿易研修センター


 当センターでは主要国政治経済動向に精通した学識経験者を委員、講師に迎え、最新情報の収集、分析を行うとともに行政官を加えた議論を通じて、我が国通商政策の実施における課題抽出を目的とした3研究会(IIST国際情勢研究会、IIST・中央ユーラシア調査会、IISTアジア研究会)を非公開で開催しています。各研究会が年1回開催する公開シンポジウムにおいて各専門家から以下の見方が示されました。


IIST国際情勢研究会 公開シンポジウム
「日本外交の課題とアジア」 / 2011年12月8日開催

―2012年はアメリカ大統領選挙、韓国総選挙・大統領選、ロシア大統領選挙、中国指導部交代など、世界の主要国で大きな動きがあることが予想されています。本シンポジウムでは、このような主要国の動きに日本がどのような方針で対応していくべきか、当該分野の第一人者からご報告いただきました。

 まず、本研究会座長である北岡伸一東京大学教授は「野田外交の可能性」において、世界は大きな転換期にあり、世界秩序をリードする国がなくなっている現在、日本の前には戦略的空間が広がっており、日本が環太平洋連携協定(TPP)協議参加を表明したとたん、いろんな国が動き出したのはその例だと述べた。その上で、舵取りをする野田政権の責務は大きいとし、日本は経済回復に向け、現在非採算部門に投入されている資金と人材を成長部門へ移していくことが大事であり、その意味でアジアへシフトへしていく事は重要であると述べた。さらに関係各国の新政権との関係をどう構築するにせよ、日本は政治を安定させる事が基本であり、政権安定後の日本にこそ目の前に広がる戦略的空間を活かしたチャンスがあるとの見解を示し、政権安定については、早期解散・総選挙は国益にとってマイナスであることが一般にも理解されてきてきたとの見方を示した。
 久保文明東京大学教授は「オバマ外交の評価と2012年大統領選挙の展望」をテーマにアメリカ大統領選挙について、オバマ大統領への評価の高いテロ対策、外交政策に比べ、支持率に繋がる経済分野での評価は低く、増税と歳出削減を常識的にリンクさせた財政赤字解消策で、無党派層の支持を得ていく厳しい選挙となると分析した。また、共和党が議会において多数派である限り追加的な財政出動の可能性は少なく、アメリカ経済は長期にわたる自力回復に期待するしかないとした。また、国防費削減での縮小するリソースの下、外交面では中国に対し「航行の自由」(freedom of navigation)の強い姿勢を示すなど、近年アジア重視を掲げるアメリカに対して日本の協力範囲は極めて大きくなるだろうとの見解を示した。
 高原明生東京大学教授は「国家文化安全保障を唱える中国の政治外交」において、中国では2012年秋の党大会で胡錦濤総書記の後任に習近平氏、 翌年春の全人代で温家宝首相の後任には李克強氏が就任する見通しであるが、政策の方向性をめぐっては、深刻な意見対立が党内に存在することを指摘した。その上で2011年10月の党中央委員会総会で言及された「国家文化安全保障の強化」について、総合国力競争に勝利するために対外的なソフトパワーを強化するというオフェンシィヴな面のみならず、外国の文化的な影響が国内に浸透することを防ぐというデフェンシブな面があるといった国際的要因の他、倫理道徳の退廃への対応やインターネットの管理強化など様々な国内 的要因があると解説した。そして、 党大会を控え経済のみならず政治、外交、社会の方針をめぐり、「改革か保守か」で指導部内に激しい論争や混乱が目立っている中国の現状について述べた。
 次に「世界経済危機と東アジア経済」をテーマに大橋英夫専修大学教授は、中国が世界経済の新たな最終需要の創出源となりつつあり、中国の消費・内需主導型成長への政策転換により、東アジア経済の中国依存度は確実に上昇していると解説した。また、日本におけるTPP問題は貿易自由化を観点とするより、日本の構造改革を進める一つの契機とみるべきとの見解を示した。
 佐藤考一桜美林大学教授は「中国の南シナ海政策」において、中国政府が南シナ海を「核心的利益」とみなし、軍艦や巡視船の活動を活発化させるなど圧力を強めた事で、周辺の東南アジア諸国の間での「中国脅威論」が高まったことについて、アメリカをはじめ周辺国は中国を封じ込める意図はなく、コミュニケーションを維持して平和的な紛争解決を求めている事を解説し、中国政府の方針も紛争鎮静化の意向であると解説した。さらに野田政権がASEANと中国での海洋問題フォーラムへ日本の参加を要請した事などを評価し、日本が中国とASEANが紛争の鎮静化に向かえるよう、支援できるか否が日本外交の一つのポイントになるだろうとの見解を示した。
 朝鮮半島情勢について、平岩俊司関西学院大学教授は「韓国大統領選挙と朝鮮半島情勢」において、2012年の韓国大統領選挙は日本にとって大きな意味を持つと述べた。その上で、現段階では与野党ともに政党政治も安定しておらず、選挙の争点も従来の南北関係や安全保障ではなく経済、国民生活などに変化してきており、保守系、進歩系の枠を超えた第3の選択肢として安哲秀氏の注目度も高く、現段階で結果を予想する事は困難であるとの見解を述べた。また、2012年に金日成生誕100年にあたり、「強盛大国の大門」を開くという国家目標を掲げている北朝鮮との核、拉致、ミサイルの問題解決に向けた日韓両国の協力関係は重要であるとした上で、竹島問題や領土問題、歴史問題と共に、存在感を増す中国とどう向き合っていくかを十分考慮して臨むべきだと指摘した。
(文責:貿易研修センター/肩書はシンポジウム当時)


IIST・中央ユーラシア調査会 公開シンポジウム
「独立20年を迎えた中央アジアの政治・経済情勢と課題」 / 2012年1月31日開催

―中央アジアへのロシアの影響力や今後の対日経済関係等、この20年の中央アジアが抱える状況を中央アジア諸国の専門家にご報告いただきました。

 まず、「中央アジアとロシアの相互関係」で当研究会座長の袴田茂樹青山学院大学教授が、2011年10月のプーチンによる「ユーラシア同盟」をとらえ、関税同盟を基礎にした経済関係強化を骨組みとするものだと述べた上で、ロシアの大国主義が復活し、旧ソ連諸国への影響力を強めているとの見解をV.トレチャコフの『ロシアのアジア』での記述を交えながら解説した。また、「ユーラシア同盟」に対するCIS諸国の反応は多様であるが、経済的な依存関係が多方面で強まっていることは事実と解説し、各国は独立国としてのポジションを確保しつつ、欧米や中国との関係も図りながら経済的なメリットを享受する方向であるとした。
 また、ロシアでの「アラブの春」の影響について、インターネットを通じた若者層の動きは共通するものの、その動機は他とは異なり経済的な不満よりは、むしろ国民を無視した選挙実施等の屈辱感が動機であるとし、今後への影響は限定的との見方を示した。さらに、権威主義的なシステムを持つ他の中央アジア諸国での影響については、キルギスでの政変でも見られたように各国は互いに微妙な立場にあるとした上で、各国ではその可能性を念頭に置き備えている現状を示唆した。
 そして、中央アジア・コーカサス地域ではエネルギー問題を中心に、ロシア、CIS諸国が絡み合い国際戦略的にも非常に緊張している事、イラン核開発による中近東の情勢では、ロシアは事実上臨戦態勢にあり、イスラエルの攻撃いかんによって戦争勃発の緊張が高まっている予断を許さない現状である事を解説し、日本も危機感をもった認識が求められると結んだ。
 出川展恒NHK解説委員は、「“アラブの春”はどこまで広がる?」で、中東・アラブ諸国の政変と民主化運動が、必ずしも「ハッピーエンド」にならず、混乱状態を招く恐れがあることを指摘した。まず、エジプトの議会選挙で、「イスラム主義勢力」が合わせて70%以上の議席を獲得して圧勝する一方、ムバラク政権を退陣に追い込んだ「民主化勢力」が惨敗した結果を分析した。独裁政権を倒すことと、新しい国づくりを進めることは、全く別のことであり、エジプトの民主化が成功するかどうかは、他のアラブ諸国に与える影響が極めて大きく、支援を惜しむべきでないと指摘した。次に、アサド政権の武力弾圧で犠牲者が急増するシリア情勢を解説した。子どもまでもが拷問の末、惨殺される弾圧の現状、イスラム教アラウィー派という少数派による強権支配の構造、5か国と国境を接するシリアの地政学的重要性、国連安全保障理事会でロシアと中国が拒否権を行使する理由などを分析した。そのうえで、アサド政権の存亡は、中東地域全体のパワーバランスを激変させるだけでなく、アラブ世界の枠を越え、中央アジア諸国の民主化運動にも影響を与える可能性がある、と指摘した。
 田中哲二中央アジア・コーカサス研究所所長(当調査会代表幹事)は「中央アジア独立後20年の成果と現状」において、中央アジア、南コーカサスの8カ国の経済開発について、資源保有国4カ国と資源非保有国4カ国の経済パフォーマンスの対比を「4:4の中央アジア経済シェーレ」と位置づける見方を示し、国別経済格差と国内経済格差の併存という困難な状況が暫く続くと指摘。その上で、中央アジア・南コーカサスの国々では、基本的に独裁手前の権威主義的政権が継続しているとの見方を示し、経済パフォーマンスが良好な資源保有国、疑似ナショナリズムが高揚して国境の壁が高くなり、結果的にソ連時代よりも域内経済協力などが大幅に低下している状況を指摘した。「移行経済論」的にみれば、中央アジア・コーカサスは資源保有国を中心に、中・東欧型モデルとは異なる「経済改革の成功」と「政治改革の停滞」を特徴とする東アジア型(中国・ヴェトナム)に近い路線を歩んでいるとしている
 対日関係では高い技術を伴った民間投資が期待されているが、資源外交だけに偏ることなく多方面での交流が必要で、当面は「中央アジア+日本」対話スキームのアクションプランの着実な実行が肝要であるとした。韓国、中国のプレゼンスが拡大しロシアの回帰も進んでいる中で、日本らしい対中央アジア・コーカサス経済協力の必要性を求めた。また、大統領復帰の確実なプーチンの「ユーラシア同盟」については、中央アジア諸国では米国等西側への距離を考えて各国にはデリケートな態度の違いがあるが、このロシアの新構想は旧ソ連圏経済同盟構想であり、実質的にはロシアの中央アジア回帰構想でもあるとの見解を示した。
 この他、津田隆好経済産業省 ロシア・中央アジア・コーカサス室長が「中央アジア諸国の対日経済関係」をテーマに中央アジアの経済情勢、日本との貿易・投資状況の他、日本と中央アジア地域との経済対話の枠組み、今後の経済産業省の施策等について解説した。
(文責:貿易研修センター/肩書はシンポジウム当時)


IISTアジア研究会 公開シンポジウム
「中国の東アジア経済協力と日本」 / 2012年2月9日開催
―現在中国は、ASEAN諸国との緊密な関係強化に力を入れており、その影響力は拡大しています。その状況下で、わが国はいかに対応すべきか、5名の当該分野の専門家から見解を発表していただきました。

 まず、「中国の台頭と東アジア」の基調講演で白石隆政策研究大学院大学学長は、東アジア地域では経済システムと安全保障システムの間に構造的緊張があり、それにもかかわらず、東アジア地域がこれまでそれなりに安定してきたのは、中国の対外政策の戦略的合理性とそれを踏まえた日米の戦略、特に中国の戦略環境安定化政策(韜光養晦)と日米の関与と抑止の政策によると述べた。ただし、2008年のリーマンショック以降、中国の戦略的政策決定能力の低下、オバマ政権のアジア再関与政策によって地域秩序のダイナミズムに変化がおこり、中国リスク・ヘッジのため、東アジアを枠組みとする地域協力ネットワークのハブとなってきたASEANと地域的な安全保障ネットワークのハブである米国がリンクし、アジア太平洋を枠組みとする地域協力が重要となりつつあると分析した。また、その上で、中国の台頭によって東アジア地域に中国中心の地域秩序が生まれつつあるとの見方は誤りであると指摘した。さらに、東南アジア各国の行動については、中国の台頭により中国になびくといった単純な話ではなく、各国の地政学的位置、東アジア経済への統合のレベル、国内政治における経済成長の政治の重要度などの要因によってその行動に違いがある、ただし、中国はその経済協力によって、特に大陸部東南アジアにおいて、国益定義のパラメータそのものを変えていく可能性がある事も指摘した。
 近年注目されているインドネシアからみた「中国の経済的プレゼンス」について、佐藤百合アジア経済研究所地域研究センター次長は、インドネシアの貿易構造は、資源輸出、工業製品輸入に特徴づけられる中国との非対称貿易と、ASEAN域内でのバランス貿易の二面性があると指摘した。その上で、中国貿易はインドネシアの貿易構造、産業構造だけでなく、産業政策、さらには閣僚人事にまで影響を及ぼしていると解説した。また統計では把握しにくい中国の非正規貿易や非正規投資の実態を解説し、官民の投資、融資、援助が渾然一体になっている象徴的な例として、スラバヤ=マドゥラ大橋などの両国トップ外交によるインフラ開発プロジェクトを紹介した。その上で、インドネシアの産業構造や雇用創出の観点から考えると、正規の直接投資が工業分野においてインドネシア人を雇用する形で拡大することが望ましく、漸進的な通貨調整と歩調を合わせながら、廉価品の大量輸出から直接投資へ、非正規性の是正へという方向に中国が変わっていくことが望まれると結んだ。
 次に民主化の加速で注目されるミャンマーについて「中緬関係の新展開 ― 中国は『胞波』か ―」で工藤年博アジア経済研究所地域研究センター東南アジアⅡ研究グループ長は、ミャンマーでは天然ガス、水力発電、鉱業等の資源開発に加え、地政学的重要性を活かすべく交通インフラ(深海港、越境道路、高速鉄道)や工業団地の建設などの大規模インフラ整備が近隣諸国(中国、タイ、インド)の手によって始まっている現状と共に、中国の対ミャンマー政策が戦略的利益を目的とした経済協力、首脳外交で展開されている状況を述べた。しかし、近年の課題として反中国感情、中麺国境の少数民族問題、米国の対ミャンマー政策の変更による中国依存度の低減等があると指摘し、新政権の下でバランス外交を模索するミャンマーで、中国との関係調整が始まっているとの見解を述べた、最後に、日本の対ミャンマー政策では一貫性のある政策、対日感情の強みをいかした政策とともにトップ外交が重要性をもつと述べた。
 本シンポジウムの総括として最後にアジア研究会座長である原洋之介政策研究大学院大学特別教授は、中国のプレゼンスが大きくなり、インドネシアとミャンマーの報告では経済面で中国が非常に大きなインパクトをもつがはっきり示されたと感想を述べた。その上で、東アジアの状況を日本、中国、ASEANの3つだけで見るのは非常に危険であると言及し、ラオスで日本のJICAの協力よりも韓国の協力が増えている事を解説し、韓国というプレイヤーがASEANの将来を考えるときに重要であるとの見解を述べた。
 また、基調講演での白石学長の「中国における戦略的決定能力の低下」を重要な発言とした上で、様々な利害関係者が政策決定のプレイヤーとなってきており、中国が一枚岩ではなくなってきた事を示しているとの見解を述べ、アジアに限らず、世界全体が不安定かつ不確実な時代に入っていると結んだ。
 この他、清水美和東京新聞・中日新聞論説主幹は「中国の指導部交代と日中関係」をテーマに中国外交路線他を解説し、指導部交代後の日中関係についての意見を述べた。
(文責:貿易研修センター/肩書はシンポジウム当時)


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