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「結(ゆい)」とヌーヴェル・ヴァーグ ~2011フランス・韓国ミッション成果と所感~ | 九州地域バイオクラスター推進協議会事務局 財団法人くまもとテクノ産業財団産学連携推進センター バイオクラスター推進室 室長 村上 稔【配信日:2012/03/30 No.0205-0836】

配信日:2012年3月30日

「結(ゆい)」とヌーヴェル・ヴァーグ
~2011フランス・韓国ミッション成果と所感~

九州地域バイオクラスター推進協議会事務局
財団法人くまもとテクノ産業財団産学連携推進センター バイオクラスター推進室
室長
村上 稔


 トゥールーズの街で、フランスF2Cと九州地域バイオクラスター推進協議会のメンバーが集った今回のミッションは、贈呈品として送った器の名称同様に、双方の「結」の場でもあった。
―貿易研修センターは、平成23年度、日仏韓の食品関連バイオ企業間連携の促進・強化を目的とした仏韓へのミッション派遣及び関連セミナー他を、九州地域バイオクラスター推進協議会、九州経済産業局と共催した。本記事は仏ミッションに参加された九州地域バイオクラスター推進協議会バイオクラスター推進室長の村上稔氏にご寄稿いただいたものです。―


 九州地域バイオクラスター推進協議会(以下「KBCC」と表記)は、九州における機能性食品のみをターゲットとしたバイオ産業プロジェクトとして平成19年9月に設立された任意団体である。これまで予防医学・サービス産業と連携した「フード・健康アイランド九州」の構築を目的とし、九州の地域特性を生かした機能性食品・素材等の研究開発・量産化拠点の形成に向け、研究開発から販路開拓までの各種事業を展開してきた。現在の会員数は約200で、設立当初の65から4年半の間に3倍以上の伸びを見せている。九州各県の自治体・経済団体・企業・大学・研究機関・個人によるネットワークを中心に、九州経済産業局や九州各県で行われているバイオ産業振興の取組みと連携して様々な事業を展開している。
ラボの見学

ラボの見学

 これらの事業のうち、会員企業の海外及び国内他地域への販路拡大等を図るため、海外展開及び国内他地域との連携事業を実施している。2011年には九州の健康食品及び機能性食品企業、大学とのビジネスや研究開発等における韓国展開及びフランス展開を支援するため、九州からミッション団を派遣したところである。
 2011年10月に実施した韓国へのミッション団派遣では、韓国の食品関係企業、大学等研究機関等とKBCC会員との交流及びビジネス等に係る情報・意見交換等を実施し、その結果、具体的な商談へと進展し成約となった事例や現在も継続している商談等もあるなど、ビジネスとしての成果も出てきている。また、この韓国訪問をきっかけとして、2012年2月には韓国国家食品クラスターの訪問団が九州を訪れ、KBCC事務局や会員企業と意見交換を行なうなど、今後の連携強化が期待される成果も出てきている。
 一方、フランスへの訪問団派遣では、昨年11月の終わりにKBCCのメンバーがフランス南西部の中心都市トゥールーズを訪れている。以下、このフランスミッションの詳細について報告する。
 トゥールーズは、赤レンガ造りの古い建物が並び、「バラ色の街」と呼ばれる町並みが中世以来の永い歴史を感じさせる一方、航空宇宙産業の最新テクノロジーが未来にタイムワープしたかのような印象を与えてくれる街でもある。このトゥールーズの街で行われたフランスF2Cとのミーティングは、
KBCCのプレゼンテーション

KBCCのプレゼンテーション

私たちKBCCにとって最初のフランス訪問団派遣であったが、KBCCの今後の展開を考える上で大変参考となるものでもあった。
 フランスF2Cは、4つのクラスターから構成されており、それぞれのクラスターは独自の分野に優れた専門性と特徴を持っていて、各地域で産学行政の大きなプロジェクトを推進している。 
 トゥールーズを拠点とするAgrimipは農業関連産業のクラスターで、会員数は約150。農産物成長促進のための微生物利用、有機栽培等を特徴とするNEOFERTIL(ネオファティール)プロジェクトなどの事業を展開している。また、フランス東部のディジョンを拠点とするVitagoraは、味、栄養、健康関連のクラスターで、会員数は100を超え、健康分野、機能性食品の研究等が盛んであり、肥満予防効果を持つ乳飲料等を開発するVITALIM’ SENIOR事業等を展開している。フランス西部のレンヌを拠点とするValorialは、食の改善・革新に強みを持つクラスターで、未来の食品開発、動物の飼料、畜産品・乳製品やプロテインの研究等が盛んであり、後述するが、代表的な取組として、亜麻の種子から抽出したオメガ3(不飽和脂肪酸)に関するものがある。そして、Aquimerはフランス最北端のノール・パ・ド・カレ地方のクラスターで、漁業、養殖業、魚類加工品の研究開発を得意とし、海洋ミネラルと脂質を含む水産加工食品の開発を行うSEAMINEROIL事業等を展開している。
 その中で、Valorialが推進する食生活改善、健康増進を目指すプロジェクト展開の手法は、KBCCでのプロジェクト形成やマーケティングに大変参考になるものであった。家畜(牛、豚、鶏等)の餌に特殊加工したアマ種子や海藻を添加し、ナチュラルでオメガ3豊富な最終加工商品を共通マークで展開するもので、なんと250社もの団体が参加しているというのである。
 また、ミディ・ピレネー地域でのTWB(Toulouse White Biotechnology)のプロジェクト展開は、組織化手法、戦略、グラントなどその強固な連携に驚かされた。クラスター、国レベルの研究所、教育機関、技術移転機関が中心となって、産業界との緊密な連携をとりながら有数なバイオ分野の研究を進めており、その活動を地方政府や投資機関、大手企業等が支援しているのである。 「Public-Private Partnership」をキーワードに、有機的な連携と長期にわたる支援を行っているのだ。
 このようなフランスF2Cの戦略、ネットワーク形成、組織化手法等は、KBCCの今後の展開を考える上でいいヒントとなった。3月上旬にはValorialの関係者を招聘して勉強会を開催するなど、いまKBCCでは、このフランス訪問がきっかけとなって、会員企業による面的な事業展開を考える動きも出てきている。新しい波=ヌーヴェル・ヴァーグとなりつつある。5年目の節目を迎えたKBCCにとって更なる発展のためには、地域特性を生かしたプロジェクト形成や展開戦略等が今後のテーマとなりそうである。
 一方、KBCCの参加メンバーも時間をフルに活用し、企業訪問やプレゼンテーション、F2C企業との情報交換などを積極的に行った。特に5日目のプレゼンテーション、BtoBミーティングでは、最終日であるにもかかわらず、予定時間をオーバーしてしまうほど熱心な情報交換や商談が繰り広げられていた。その結果、各社とも、詳細情報やサンプル提供など次の段階につながる成果が出るとともに、今後の連携がさらに強化されることが予想され、ビジネスとしての成果も期待されるところである。そして後日、更なる情報交換のためF2C企業を訪ねてフランスへ行く予定があるとの情報なども届いてきている。
 そのほか、昼食や夕食時には、地元行政機関との交流やF2Cメンバー企業との意見交換会が開催された。トゥールーズ副市長をはじめ市の幹部職員との交流やBtoBに参加しなかった企業との情報交換が行われ、会場が狭く感じられるほど盛況であった。また、パリジェトロを訪問し、ヨーロッパ経済の動きや食品産業、化粧品産業の市場に関する調査も行った。
 6日間の日程を終え、次回、九州での再会を約束して帰国の途につくこととなったが、本ミッション参加企業の今後のビジネス展開を期待するとともに、経歴と実績を誇るフランスF2Cとの連携は、今回参加できなかったKBCCメンバー、企業にも大いに貢献するに違いないと確信している。そして、この友好関係と交流を更に深化させ、双方のメンバー企業による共同プロジェクトや新事業展開へと発展し続けることを期待している。
記念品として贈呈した有田焼の皿「結(ゆい)」

記念品として贈呈した有田焼の皿「結(ゆい)」

 KBCC設立以来初のヨーロッパ・フランスへの訪問団派遣は、毎日早朝から夜遅くまでタイトなスケジュールにも関わらず、団長をはじめ参加メンバー全員が元気に帰国できたことは何よりの成果である。そして、今回の成果を訪問団参加者だけにとどめるのではなく、広く一般会員企業へと浸透させていくためにも、KBCCによる海外展開事業をより有益なものとし、次のステップへとつながるものとしていかなくてはならないとの思いを強くしている。
 最後に、今回のミッションで主要なフランス側訪問先に手渡した有田焼の器の品名は「結い(ゆい)」という。二つの紐が結われているデザインをしており、まさに、双方の今後の関係強化を象徴するものである。

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