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ラオス食品及びハンディクラフト産業の可能性 | 貿易研修センター 国際交流部 プログラムコーディネーター 播磨 秀一【配信日:2012/01/31 No.0203-0829】

配信日:2012年1月31日

ラオス食品及びハンディクラフト産業の可能性

貿易研修センター 国際交流部
プログラムコーディネーター
播磨 秀一


 貿易研修センターでは、近年CLMV諸国へのミッション派遣事業を毎年実施してきている。23年度は「地域資源を生かした産業振興」をテーマとして、ラオスの「ハンディクラフト」と「食品」分野の潜在的可能性を探るべく、両分野の専門家にもご参加頂いて2011年10月にラオス南部のサーラワン県とチャンパーサック県、および首都ビエンチャンで1週間の調査を実施した。


 今回一行は、バンコクを経由して、空路ではなくあえて陸路でタイ東部のウボンラチャタニから国境のチョンメックを通ってラオスの南部のパクセーへと入った。このルートは2001年に日本の無償資金協力でパクセー橋が完成したことも手伝って、ベトナム中部の都市ダナンの港まで通じる新たな東西経済回廊としてその整備拡充が期待されているルートである。一部区間を除き、路面状態がかなり良好であることが、まず目を引いた。
ホアイフンタイ村の女性機織りクループ

ホアイフンタイ村の女性機織りクループ

 サーラワン県では、国際協力機構(JICA)が協力している一村一品(ODOP)プロジェクト の協力先の一つ、ホアイフンタイ村の女性機織りクループを訪問することが出来た。ベトナムにルーツも持つ少数民族カトゥ-族の村で、伝統的にビーズ玉を織り込むのが特徴である。綿など主な材料はベトナムからの輸入物が大半という。多摩美術大学 の協力も得て伝統織りに一工夫を加え、純地元産のバナナ繊維を編込んだ特色ある製品開発をしている。バナナ繊維は絹より染めやすい反面、天然染めゆえ同じ色を再現するのが難しく、同じものを大量に再現・生産することは難しい。またバナナ繊維を作る伝統技術を持っている女性はいまや中高齢者ばかりで、若い作り手への技術継承にも注力しているという。
 さらにODOPが支援しているサーラワン市内で唯一のパン工房を訪問した。一見普通の民家に見えるが、併設された建屋にベトナム製の窯が二つ並ぶ。先代がフランス人からパン製造の技術を学んだ老舗の工房で、伝統的なフランスパンに加えて、日本の専門家の勧めで黒米粉を加えた新商品の開発・販売しており評判も上々という。一日1,500本程度の生産量で、所謂小規模の工房である。
 サーラワン県の産業商業局副局長からは、ラオスのハンディクラフト製品の可能性他について展望を伺うことができた。「ハンディクラフト」製品に関しては安定した市場の発掘が難しいが、ODOPの協力を得て様々な製品開発で試行錯誤中という。また、最近の日系企業の投資事例として漢方薬のツムラの事例紹介があった。中国に次ぐ第2の海外栽培拠点として進出したもので、その背景には中国における生薬の輸出規制の動きと生産地の分散化、整備の進んだ経済回廊など物流機能の改善などがあったという。またODAと民間事業との連携で雇用拡大、技術移転などを促す新しいスキーム「成長加速化のための官民パートナーシップ」案件として採択されたという背景もあることが特筆される。ベトナム戦争の爪痕である不発弾が今も残る同県ラオンガム郡に土地を政府からリースで借り受け、不発弾処理を支援するNPOが無償資金協力で処理を行い、その土地にツムラが生薬栽培事業を展開するというもので、約600万ドルを投じて、雇用拡大と農業技術の移転を図る計画。周辺村落にはツムラが学校も建設しており、新しい進出モデルとして歓迎されているという。
 同県南部に広がるボロベン高原では、直営農園を展開するAdvanced Agriculture Co., Ltdを訪問しお話を伺った。親会社はタイの日系法人タニヤマ・サイアムで、農産物輸出による外貨獲得への貢献でタイ農業省からも表彰されている企業である。90年頃以降の成長の背景には日本の約10分の1という当時のタイの人件費の安さがあったが、その後タイの人件費も徐々に上昇してきたためラオスへ進出したという。直近ではインゲンなどの農産品を栽培し、全量をタイ法人に向け陸路で出荷している。冷凍インゲンはタイから空輸で日本にも入っており、日本国内でも大きなシェアを持っている。ボロベン高原はフランスの統治下にあった約100年前からコーヒー栽培が盛んな標高1000メートル前後の肥沃な土地で、気温やベトナムへの物流などの条件でも耕作・加工基地としても最適であるという。タイ資本の企業などもコーヒーの他、ジャガイモ、ショウガなどを生産しており、ラオスのコーヒー最大手、Dao Heuang Coffeeもボロベン高原産コーヒーを生豆でベトナムに出荷しており、丸紅がホーチミンを経由して日本の市場にも入れている。
パクセーのDao Heuang市場に並ぶ食料品

パクセーのDao Heuang市場に並ぶ食料品

 今回の調査を終え、産業振興上の潜在的ポテンシャルとしては、高品質・高付加価値でも大量生産は難しいハンディクラフトの分野よりは、食品(加工)分野の方が高いとみられるが、現状ではラオスの食品加工業はコーヒーやビール等のごく僅かの製品を除けば、産業と呼べる水準に達していないというのが専門家の見解である。ラオス政府も有機栽培など付加価値ある製品を重要輸出産品として捉えているものの、その流通環境にはまだ課題も多い。加工食品、生鮮農産品など鮮度維持が生命線である生産事業者からは、国境での通関手続きなど行政面の効率化を要望する声も聞かれた。専門家からは、原料を新鮮な状態で加工工場に運ぶ物流システムの構築や、流通段階での保存やデリバリー、コールド・チェーンの整備等が今後の課題として指摘された。
 一方、織物・布製品、木工芸品、竹製品等のハンディクラフト製品を見れば、既に市場にあふれる安価な中国製品との差別化が必要であろう。近年日本でも人気のある高品質のラオスの絹織物を使った帯・着物、和装小物などに見られるような、より付加価値の高い製品等が注目される。ラオスの主要な輸出品には、鉱物、電力(水力)に並んで縫製品が続いており、ラオス商工省の「輸出に関する国家戦略2010」の中でもラオス・シルクと綿製品が重点品目の一つに挙げられている一方、ラオス国産生糸は5%以下と低く、ほとんどが中国・ベトナム・タイ等からの輸入であるのが現状であるという。専門家からはラオスの桑、ラオスの蚕、ラオスの繭から紡いだ生糸で織り上げた、高級織物の輸出を振興し、手工芸品ゆえの希少価値で、高品位ブランドを確立すべく、積極的に育成するべきとの提言があった。また同時に、消費国のニーズを研究し市場に合わせた新しいデザイン開発を重ねる努力も肝要との指摘もあった。
 ラオスへの進出戦略や行政による産業振興施策を考えるにあたり筆者が感じたのは、メコン諸国を各国個別に見るのでなく域内市場とモノの流れを複眼的に見る必要があるという点である。地域の中核都市バンコクを中心に見据え、インドシナ半島全域、中国南部の昆明や南寧、更には貿易自由化の進展するASEAN全域までも視野を広げ、利用可能な物流網全体を俯瞰して投資・振興する産品を考える視点が欠かせない。また日系企業の進出・展開支援について考える場合には、直接投資や対日輸出だけでなく、Advanced Agriculture Co., Ltdの例に見るように、既にメコン圏に既に進出済みの企業による二次投資進出や域内市場での販路・市場開拓でも今後ラオスが注目される可能性を感じた。タイやベトナム資本による投資は既に旺盛だが、日系企業も時機を逸することなく、インフラ投資に見合った積極的な事業展開が期待される。


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