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好調な個人消費にけん引される日本経済 | 株式会社 日鉄技術情報センター チーフエコノミスト 北井 義久【配信日:2012/01/31 No.0203-0825】

配信日:2012年1月31日

好調な個人消費にけん引される日本経済

株式会社 日鉄技術情報センター
チーフエコノミスト
北井 義久


 日本経済は、団塊の世代が完全リタイアーを迎え労働需給が好転することでの個人所得の増加と復興関連需要の顕在化により、2012年に高めの成長を達成する可能性が高い。


 日本経済は、東日本大震災による大きなダメージから内需を中心として緩やかな回復を続けており、2012年には拡大テンポが加速する可能性が高い。これは、一連の補正予算による復旧・復興関連支出を中心とする歳出拡大効果の多くが12年に現れること、個人消費が労働需給の好転から予想外に好調であることによる。一方で、海外経済は欧州のソブリン債務問題、米国の財政赤字問題などにより依然として不安定であり、12年の日本経済にとって最大のリスクと考えざるを得ない。

 まず、11年度における4次に及ぶ補正予算の実質的な総額は約19兆円と過去最大規模に達し、その内の6兆円強は公共投資の追加に繋がると見込まれる。さらに、本格的な復旧・復興事業を盛り込んだ第3次補正予算の成立が11月となったことから、補正予算による歳出拡大の日本経済に及ぼす効果は12年に集中することとなり、12年の成長率を2%前後引き上げる。端的に言えば、第3次補正予算で発行が決まった11.6兆円の復興債の資金が12年の日本経済にプラスの影響を与える。

 一方、東日本大震災直後に大きく落ち込んでいた個人消費は昨年の秋以降予想外に好調である。例えば、コンビニエンス・ストアーの月間店舗当たり売上高は、10年には平均15.5百万円であったが、11年9~11月の平均は16.7百万円と前年平均を8%近く上回っている。

日本のコンビニエンス・ストアー店舗当たり月間販売額  さらに、東日本大震災の影響による生産の落ち込みにより低迷していた乗用車販売台数は、4月の季節調整済み年率2.3百万台から生産の回復により徐々に持ち直しており、9月以降はエコカー補助金の効果が出ていた09年度の4.2百万台に若干及ばないものの、年率4百万台前後の水準を維持している。また昨年末から急増していた薄型テレビ出荷台数は、7月に地上デジタル放送への移行が予定通り実施されたこと、家電エコポイント制度の影響一巡したことにより8月以降急速に減少したが、10・11月の季節調整済み年率出荷台数は10百万台弱と08年以前5年間のテレビ出荷台数の平均値8.7百万台をかなり上回る水準でほぼ下げ止まっている。加えて、家電製品の中では洗濯機の好調が目立っており、10・11月の販売台数は季節調整済み年率で5百万台超え、10年の販売台数4.7百万台を上回っている。

 サービス関連の消費に目を転じても、大手旅行業者の国内旅行取扱額は、11年2月の季節調整済み年率3.83兆円から3月2.69兆円、4月2.81兆円と大きく落ち込んだが、5月から回復に転じ8月以降は2月の水準を上回り続けている。外食産業売上高指数も、3月から10月まで前年比でほぼマイナスを続けていたが、11月には1.1%のプラスに転じている。

 この様に各種の個人消費関連指標が堅調な背景としては、東日本大震災による落ち込みからの反動増が続いていること、小売企業・消費財メーカーの需要掘り起こし努力が実を結んでいること、リーマンショックから続いている個人消費抑制の長期化で消費者に節約疲れがではじめたこと、などが指摘されている。ただしそれと同時に、労働需給が徐々に好転し賃金がようやく前年比でプラスに転じたことが、個人消費にプラスに働いている。例えば、09年7月に5.5%のピークに達した季節調整済み失業率は11年12月には4.5%まで低下している。また季節調整済み失業率は、9月の4.1%から10月・11月と4.5%に上昇しているが、これは労働力人口の増加と失業者の増加が同時に起きた結果であり、これまで就業を諦めていた潜在的失業者が労働市場に復帰したことによる前向きの動きと捉えることが出来る。さらに季節調整済み求人数は、09年5月の485千人をボトムとして11年11月には708千人に増加しており、企業の採用意欲は着実に回復している。この様な労働需給の好転により、賃金指数の3カ月移動平均値の前年比は、10年4月以来ほぼプラスで推移している。リーマンショック後の急激な労働需給の悪化とそれに伴う賃金の低下により、個人消費を抑制してきた消費者もようやく消費に前向きになって来た。またコンビニエンス・ストアーによる高齢者需要の掘り起こし、自動車メーカーによる相次ぐ低燃費新型車の導入、家電メーカーの乾燥機能を強化した洗濯機の投入など、企業の市場開拓努力は消費者マインドの好転があればその効果が一層高まる。

 この様な動きは2012年にも維持されると考えられる。これは、復興・復旧関連支出が直接・間接に個人所得の増加に繋がること、労働力人口の減少が本格化し失業率が順調に低下すると見込まれることによる。特に団塊の世代が65歳に達することにより、15歳から64歳の人口の減少テンポは、11年の▲0.3%から12年には▲1.3%に一挙に加速する。それだけ労働需給はタイトになりやすい。また、日銀調査による前年12月時点における新卒採用予定数は12年に関しては、4年振りに1.5%のプラスに転じる。企業はベテラン従業員の大量退職を受けて、後継者の採用に向かいつつあると考えられる。

日本の新卒採用予定者数の伸び率  加えて、個人消費と同時に、2012年には設備投資、住宅投資もリーマンショック後の落ち込みからの回復の動きが続くと見込まれる。特に設備投資は、企業収益と手元資金が高水準を維持していることから、円高の動きが一巡し、内需の底堅さが確認されれば増加テンポが加速すると期待出来る。一方輸出は、アジア経済の成長テンポの減速などにより12年には伸び悩みを余儀なくされる可能性が高く、結果的に日本経済は12年に内需主導の3%近い高めの成長を達成出来る可能性が高い。ただし、13年に入ると復興・復旧関連需要が減少に転じ、14年には消費税率が引き上げられる可能性が高まっており、12年は高めの成長を設備投資や雇用のさらなる増加に着実に結びつける為の重要な一年となる。

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