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連載 中小企業の海外進出 最終回 「現地情勢のマイナス変化への対応 (残るか、他国に移るか、撤退か)」 | ベトナム経済研究所 研究理事 星野 達哉【配信日:2011/9/30 No.0199-0811】

配信日:2011年9月30日

連載 中小企業の海外進出 最終回
「現地情勢のマイナス変化への対応 (残るか、他国に移るか、撤退か)」

ベトナム経済研究所
研究理事
星野 達哉


 中小企業が海外進出する場合は、進出当該国に於いて、競争力ある労働コスト、廉価な原料資源が入手できる、優遇措置がある、外資規制が少ない、国内市場が大きい、政治が比較的安定している等々の条件を検討して決定する。これらの条件がマイナスに変動した場合、企業としては、その対応を検討しなければならない。マイナス影響が少なければ、当該国内での対応を検討するが、影響が大きい場合は、条件の良い他国に移るか、撤退するかを検討する。この判断は、単純でなく、諸事項を配慮してGLOBALな視点から下される。


1.(1)中小企業の海外進出は、進出当該国に於いて、競争力ある労働コスト、廉価な原料資源が入手できる、外資に対して優遇措置がある、外資規制が少ない、現地調達比率が厳しくない、他国からの同商品輸入が関税で守られている、国内市場が大きい、政治が比較的安定している、重要取引先が進出している等々の理由で、実現される。これら理由となっている事項がマイナスに変動した場合、企業は、そのまま残留するか、条件の良い他国に移るか、撤退するかの経営判断に迫られる。この判断は、単純でなく、諸事項を配慮して検討される。
(2)進出した時の諸条件が、マイナスに変化した場合、進出した現地会社の採算は悪化する。最近発生した事例では、下記のケースがある。

(i)当該地で、優遇措置の待遇を受け、加工製造し製品を日本や第三国に輸出していたが、輸出用の加工製造や労働集約的事業に対して、当該国が優遇措置を取りやめたケース。
(ii)労働力が豊富で安く確保できる、或いは原料・資材が安く調達できることで進出したが、経済成長に伴い、労賃が高騰したり、或いは、原料・資材が競争力ある価格で調達することが出来なくなったケース。
(iii)ASEANの中では発展途上にあり、ASEAN先進国より高い関税で保護されていたが、或いは外資の製品輸入と国内での販売が規制されていたが、それらが撤廃されることになり、以前のメリットがなくなったケース。
(iv)重要客先の要請で、現地に進出したが、その客先の業績が悪化し注文が来なくなったケース。

 上記のケースが発生した場合、その影響が少ない場合は、経営の合理化や当該国内での遣り取りで対応できる。しかし、影響が大きく、当該国内だけでは
対応が難しい場合、条件の良い他国に移ることになる。この場合、ASEANの近隣国が対象になる。撤退のケースも有り得るが、数は前者より少ない。
2.(1)中国は、外貨準備高の増大もあり、約1年前に、外資の輸出加工製造事業や労働集約的事業に対して優遇措置を廃止し、今後中国はこの分野で外資を歓迎しない声明を出した。この関連分野で、日系等多くの企業がベトナム、インドネシア等ASEAN諸国にシフトしてくると思われた。しかし、或る調査によれば、中国に進出した当該日系企業で、中国から他国にシフトしたいと答えたのは僅か10%であった。多くは中国に留まり経営の効率化を図り、輸出のみでなく、中国国内市場も狙っていきたいとのことだった。中国に進出済みの企業が上記のような経営判断をするのは、理解できる。但し、新規にこの分野で海外進出する企業は、中国を避け、インドネシア、ベトナム、タイ、カンボジア、更にはバングラデッシュ、ミャンマーを検討するようになっている。最近の日系企業の進出が多い国は、タイ、ベトナム、インドネシアである。
(2)事例―1
A社は作業服等の繊維縫製会社で、7年前から中国に進出し工場を建てた。上記の中国政府の優遇措置廃止に加えて、中国での労働コストが急騰し採算が大幅に悪化した。2年前に中国+oneで、ベトナムにも工場を建てておいたので、今回、中国工場は縮小し、ベトナムに主力を移すことにした。更には、3年先を見越して、労働力が廉価なミヤンマーに進出することを検討している。

3.(1)ベトナムを含むCLMV諸国(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)では、AFTA(ASEAN Free Trade Agreement)のCEPT(Common Effective preferential Tariff)で、2015年にはASEAN域内関税が0~5%となる(ASEAN先進国は2010年から)。これまで高い関税に守られていた当該国の商品が、他のASEAN国との競争にさらされることになる。
(2)事例―2
日系家電メーカーC社やD社は、ベトナムでの家電・オーディオの生産から撤退し、それらの機種は、より競争力があるタイ、マレーシア、インドネシアなどの自社の現地工場に集約した。昨年からベトナムは外資の商品輸入・国内での販売を認めるようになった為、C社やD社は、ベトナムでの同商品の販売・メンテナンス会社を設立し、ベトナムでは同商品を輸入し(関税が0~5%になる)、ベトナム国内で販売する戦略をとることにした。
(3)ベトナムでは2018年には、高い関税で保護されている四輪車の関税がゼロとなる。ベトナムは四輪車の製造規模約10万台でメーカーは外資12社(トヨタ、GM大宇、フォード、スズキなど)、地場5社がひしめいている。関税がゼロとなれば、近隣のタイやインドネシアからの日系輸入車が増え、競争力ある、或いは、廉価な四輪を作るメーカー3~4社以外は、販売・メンテナンスに業務を変えるか、撤退するしかない。

3.(1)重要客先の要望で、中小企業が海外進出した場合、その客先が経営難に陥って、そこからの注文が無くなった場合のリスクは大きい。その客先は、中小企業が自分の要望に従って進出するあたり、通常、注文量の保証や取引の保証はしない。
(2)事例―3
工作機械の制御ソフト開発会社Y社は、重要取引先の強い要望に従って、ASEANのX国に進出し、4年間事業は収支トントンできていた。日本国内の
景気低迷で、重要客先の経営は悪化し売上は激減した。それに伴い、Y社への
注文は無くなった。Y社は、X国での客先開拓に約1年奔走したが旨く行かず、撤退を決めた。

4.(1)労働集約的事業なので、10年前、人件費が安く労働力が豊富な中国に進出した。しかし中国で高度成長が続き生活レベルが上がり、労賃が高騰した。また単純労働の労働集約事業に人が集まりにくくなった。ビジネス環境が10年前と大きく変わった。
(2)事例―4
労働集約的製造業の部品メーカーQ社は、中国とベトナムに工場を持っていたが、人件費の高騰で中国の工場は縮小し、ベトナムに注力していた。最近のベトナムの高いインフレ率と人件費の高騰、及び輸入資機材の高騰で、今後の見通しから判断して、カンボジアとミャンマーへの進出を検討し、当面カンボジアへの進出をきめた。

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