平成20年度 メコン圏中小企業事情調査ミッション(ベトナム・カンボジア)
概要
ASEAN・東アジアの経済連携の進展とともにメコン圏諸国の役割が増大し、日本の支援協力に対する期待が高まってきているなか、当該地域における中小企業の現状と企業支援のニーズ、我が国中小企業進出の今後の可能性を把握し、カウンターパートとのネットワークを構築を目的とした「メコン圏中小企業事情調査ミッション」をベトナム及びカンボジアの2カ国に派遣した。併せて、本ミッションの成果は、2009年7月に中小企業振興をテーマに開催を予定している「第3回CLMVヤングリーダーシップ・プログラム」の効果的実施のための参考とする
主催:(財)貿易研修センター(IIST)
日時:2009年2月8日(日)~15日(日)
場所:ベトナム(ハノイ市、ホーチミン市)、カンボジア(プノンペン市)
参加者
(1)中小企業分野の専門家:
1.中小企業基盤整備機構 国際化支援アドバイザー
兼ベトナム経済研究所 研究理事 星野 達哉 氏
2.中小企業基盤整備機構 新事業支援部 新事業支援企画課
課長代理 檜山 昭信 氏
3.日本商工会議所 国際部課長 西谷 和雄 氏
(2)オブザーバー:
1.経済産業省アジア大洋州課 参事官 幸田 淳 氏
2.経済産業省アジア大洋州課 課長補佐(CLMV担当)中山 正幸氏
(3)事務局
1.貿易研修センター 国際交流部長 水吉 徹夫(団長)
2.貿易研修センター アジア部 豊山 朗子
主な訪問先等
・商工省(Ministry of Industry and Trade)
・ベトナム日本商工会幹部との意見交換会
・ハノイ技術センター(HANOI TAC)
・ベトナム中小企業振興庁(ASMED)
・ベトナム商工省戦略研究院(IPS-MOT)
・チェンソン工業団地を開発管理会社:Viglacera Corporation
・チェンソン工業団地(Tien Son IZ)
-SHIHEN VIETNAM Co., Ltd
-SUMITOMO ELECTRIC INTERCONNECT PRODUCTS (VIETNAM)
・JETROホーチミン事務所
・タントアン輸出加工区視察
-協伸ベトナム
-ダイワプラスチックベトナム
-昭和ベトナム
・ベトナム商工会議所ホーチミン支部(VCCI)訪問
・カンボジア開発評議会(CDC)
・鉱工業・エネルギー省
・プノンペン商工会議所
・日本大使館 大使表敬
・女性省、パビ大臣表敬
・視察先企業関係者との意見交換会
・プノンペンSEZ
内容
本ミッションでは、ベトナム(ハノイ、ホーチミン)、カンボジア(プノンペン)の現地政府幹部、経済産業団体関係者との意見交換を行うほか、実際に現地へ進出している日系企業経営者らと意見交換を行い、現地の中小企業の現状やニーズを把握する一方、派遣した専門家から現地側に対して、今後の日本企業誘致に向けて、具体的なアドバイスや講義なども行なわれた。
また、ハノイのチェンソン工業団地、ホーチミンのタントアン輸出加工区、カンボジアのプノンペン特別経済区等を視察し、異なる分野(プラスチック、縫製、靴加工)で進出している日系企業を訪問し、実際に進出する際の問題点、今後の課題などを確認した。さらに、各都市でこういった日系企業関係者やJETRO関係者、JICA専門家とも意見交換会を行なうことにより、現地の中小企業誘致の上での問題点や課題などについて理解を深めることができた。
ベトナムでは、中小企業育成の分野で、現在既に育っている縫製産業、皮加工産業のみならず、今後自動車部品や電器部品を製造する裾野産業の育成の重要性が認識されているが、現状はまだ技術面や人材不足等、様々な課題があることまた、中小企業を支援のため、政府として現在、新たな法案作りや技術支援が行なわれていることがわかった。また、専門家から各訪問先で世界的な不況の中、ベトナムの中小企業への影響についての質問に対しては、主に輸出依存型の産業で不況の影響はは大きいが、(ある日系企業では稼働率が今年に入って40%落ちているとのこと)、国内販売企業への影響は少ないことや業種により影響にも差があることが判明した。
カンボジアでは、いわゆる零細・小企業が多く、まだ中小企業はそれほど育っていないという現状があり、政府機関や関係諸機関より将来的に中小企業育成を重視している姿勢が見受けられた。カンボジア開発評議会(CDC)の岩名専門家より現在、カンボジア政府が中小企業を含めた海外企業誘致のために行なっている様々な優遇措置について説明を受けた。また、2005年に「中小企業育成」を担当する目的で新たに鉱工業・エネルギー省内部に設立された「Small Industry and Handicraft Department」の局長や女性省のパビ大臣より、中小企業育成の分野を強化してはいるが、未だ中小企業育成のための情報や技術、人材が十分でなく、日本からの支援や協力を期待するというコメントがあった。専門家から将来的に、日本の中小企業誘致・協力をより呼び込むためには、現地の中小企業経営者の改善への意識が高まること、また幾つか具体的な中小企業の成功例を作り出していくことの重要性が指摘された。
本ミッションには、具体的に3つの成果があった。まず1つ目として、(1)現地の中小企業の現状と支援ニーズの把握、(2)我が国の中小企業誘致を促進するための具体的なアドバイスを専門家から現地サイド(政府関係者、民間SEZなど)の実施、(3)今後の中小企業育成施策に関わる現地関係者や現地に進出している日系企業関係者との幅広いネットワーク作りの構築の3点を挙げることができる。
1つめの成果である現地の中小企業の現状と支援ニーズの把握は、ミッションの報告書を作成し、関係者に配布することにより共有したいと考えている。2つ目の成果は、様々な関係者との意見交換だけでなく、中小企業育成の実行団体であるハノイ技術センター(HANOI TAC)、カンボジアのプノンペン商工会議所訪問の際に、日本の中小企業アドバイザーと活躍されている星野先生に日本の中小企業育成の事例などを踏まえて、現地の中小企業育成に対する具体的なアドバイスを含めたセミナーや講義を実施していただくことにより、より効果を生むことができたと思われる。また、3つ目の成果であるのネットワークの構築においては、2007年7月に予定を実施している「第3回CLMVヤングリーダーシップ・プログラム」の実施を通じて、より連携を強めることができると考える。
ミッション全体を通じて、ベトナム、カンボジアともに、政府のみならず、ビジネス界においても、中小企業育成分野における今後の日本政府の協力や日本の中小企業進出への期待が見受けられ、貿易研修センターとしても今回得た情報やネットワークを活用して、今後共メコン地域の中小企業育成に協力していきたい。

ハノイ技術センター(HANOI TAC) 専門家によるセミナー(ハノイ)

ベトナム中小企業振興庁(ASMED)訪問 (ハノイ)

SHIHEN VIETNAM Co., Ltd視察 (チェンソン工業団地、ハノイ)

ダイワプラスチックベトナム視察 (タントアン輸出加工区、ホーチミン)

女性省、パビ大臣表敬(プノンペン)

Tiger wing社(靴製造)視察 (プノンペンSEZ内)
担当:国際交流部